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メニュー こんにちはww ぇっと・・・名前は ぃっぱいぁりますww(は 時雨・癒恵・莢・桜癒・氷稀・黎彗・玖遼・碧 ほかにも色々(ぇ じゃぁ HPの方でよろしくお願いしますw
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「ゆ゛っぐり゛じだい゛よ゛お゛ぉ゛ぉ゛!!ゆ゛っぐり゛ざぜでえ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 山菜取りから帰る途中、茂みからそんな声が聞こえてきた。 何事かと思い覗き込むと、そこには罠にかかって動けなくなっているゆっくりがいた。 大方ハンターが仕掛けた物だろう。ゆっくりは高く売れるからな。 犬猫ならともかく、ゆっくりなんぞ助けても仕方が無いのでそのまま行こうとする。すると 「お゛に゛い゛ざん゛!!だずげでぐださい゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」 お兄さんじゃあ、しょうがないな。 小さな頃から老け顔で、十五にして父親からも『親父』と呼ばれていた俺の憧れの呼ばれ方ベスト5だし。 「そら、もうかかるんじゃないぞ…って無理だよな。ゆっくりブレインだし」 「ゆっくりできる!ゆっくりできるよ!おにいさんありがとう!!!」 「はいはい。じゃあな饅頭」 「まんじゅうじゃないよ!れいむだよ!ゆっくりおぼえてね!!」 「へーへー」 あまりこんな所を人に見られたくはないので早足でその場から離れる。 ゆっくりはまだ何か叫んでいたが、どうでもいい。どうせいつものあれだろう。 家に着いて早速至高の山菜料理を作っていると、戸を叩く音が聞こえた。誰だろう。 「はいはい今開けますよー」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 なんと客はゆっくりだった。それも二匹。 「何だお前ら、一体何の用だ」 「ゆっくりさせていってね!!ゆっくりさせていってね!!」 「何言ってやがる帰れ帰れ。うちにはお前らみたいな饅頭に食わすタンメンはねえぞ」 「まんじゅうじゃないよ!れいむだよ!ゆっくりおぼえていってね!!」 「あん?何だそりゃ。ひょっとしてお前さっき会ったゆっくりか?」 「そうだよおにいさん!ゆっくりさせていってね!!」 「じゃあそっちの黒いのは何だ」 「れいむのおともだちだよ!まりさっていうんだよ!!」 「よろしくねおにいさん!まりさもゆっくりさせていってね!!」 一体どういうつもりだろう。まさか親切なカモがいるからと、仲間共々たかりに来たのだろうか。 「ちょっと親切にした位で調子に乗るんじゃねえぞ饅頭。お前らなんかにゃ水一滴だってやらん!」 「いらないよ!ごはんいらないよ!だからゆっくりさせていってね!!」 「おねがいします!ゆっくりさせていって!!」 なんと飯はいらんときた。一体何事だ?油断させてつけこもうなんて知恵がある訳も無いし…… ま、いらんと言うなら別に上げてやっても構わんか? 今晩居座るなら明日加工所に売りに行けばいいんだし。 「ああ分かったよ。大人しくするなら入れてやる」 「ゆっくりするよ!ありがとうおにいさん!!」 「ありがとう!!」 ぴょんぴょん飛び跳ねながら家の中に上がりこむ。何を嬉しそうにしてるんだこいつらは。 「お前らはその隅っこで大人しくしてろ。何も食わせてはやらんし、暴れたりしたら食うからな」 「わかったよ!ゆっくりじっとしてるね!!」 「ゆっくりたべないでね!!」 「ああそうしてろ」 何とも妙な話だ。ひょっとして狐にでも騙されているのか? 首を傾げつつ料理を作り、一人で食う。その間物欲しそうにこちらを見ていたが、当然分けてなどやらん。 「おいお前ら涎を垂らすな汚らしい。踏み潰すぞ」 「ゆ!ごめんなさい!!ゆっくりふいておくね!!」 「ゆっくりふまないでね!!」 益々おかしい。本当にこいつらゆっくりなのか…まあどうでもいいか。 その後風呂に入ったり布団を敷いたりしている間も奴らは大人しかった。不気味だ。 「お前ら帰らんでいいのか?俺はもう寝るが」 「ゆっくりとまっていくよ!ゆっくりねていってね!!」 「ゆっくりおやすみ!!」 「ああおやすみ。寝てる間に暴れたり盗み食いなんかしたら八つ裂きにするからな」 そう言ってさっさと寝る。まあ、仮に寝てる間に盗み食いなんかされても所詮二匹だけだ。 二匹とも売れば十分プラスになるだろう。 翌朝。妙な騒がしさで目が覚めると同時に、昨夜の考えは間違っていたと思い知らされた。 こ、こいつらまさかこんな方法で俺に嫌がらせをしやがるとは……!ゆっくりって奴は悪知恵は働くんだな畜生!! 「あ、おにいさんがおきたよ!!ゆっくりおはよう!!」 「ゆっくりおきてね!!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」 どうやらあの二匹、俺が寝ている間に交尾しやがったらしい。ミニマムサイズのちびゆっくりが十匹もいる。 当然家の中は荒れ放題、食い物はほぼ全て食い尽くされている。 「お前ら、荒らすなって言ったよな?そこまで八つ裂きにされたいのか。そうかそうか」 「れいむとまりさのあかちゃんだよ!!ゆっくりかわいがってね!!!」 「ゆっくりかわいいでしょう!!!」 「んな訳あるかこの糞饅頭が!!てめえら一匹たりとも生かして返さんぞ覚悟しろ!!!」 怒鳴った瞬間、それまでの喧騒が嘘のように静かになった。 親ゆっくりれいむが、涙目になってこちらを見ている。 「ひどい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!ぜっがぐお゛ん゛がえ゛じじであ゛げだの゛に゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」 「あやまってね!!ゆっくりあやまってね!!」 「「「「「「「「「「ゆっくりあやまってね!!!」」」」」」」」」」 「恩返し、だぁ?一体どういう事だ。説明しろ糞饅頭」 どうにかこうにか聞き出した所によると、罠から助けてくれた俺に恩返しがしたかったらしい。 だが恩返しの方法なんて分からない。 そこで友人のゆっくりまりさに相談したら、可愛い赤ちゃんを見せてあげれば喜ぶに違いないという結論に達したとの事。 ゆっくりに恩なんて概念があった事に驚きだ。加工所の人に話してもきっと信じないだろうな。 「そうか。事情は分かった」 そう、悪気は無い事は分かった。だが、それだけだ。 悪気があろうが無かろうが起きた現実には何の違いも無い。俺は家中をメチャメチャに荒らされ、食い物を全て奪われた。 その代償はきっちりと払ってもらわなければならない。というか、恩返しなのに恩着せがましい物言いをするのが気に食わん。 「じゃあお前らとゆっくり遊んでやる。そうだな、かくれんぼをしようじゃないか。鬼は俺だ」 「ほんとう!?ほんとうにあそんでくれるの!!!」 「おにいさんありがとう!!ゆっくりかくれてるね!!」 「「「「「「「「「「わー!ゆっくりかくれようね!!!」」」」」」」」」」 「おっと。お前は俺と一緒に探すんだよ」 「ゆっ!だっこだ!だっこきもちいい!!!」 親ゆっくりれいむを抱きかかえて座る。こいつにはせいぜい楽しませてもらわんとな。 しばらく待ってもういいかーい。あちこちからもういいよー、と聞こえたのでゆっくりれいむを抱えたまま捜索開始。 「……ゆっくりまりさ、見つけた」 信じられん、あれで隠れているつもりか。頭隠して尻隠さずとは言うが、こいつは顔しか隠れていない。 「みつかっちゃった!!おにいさんすごい!!」 「れいむはわからなかったよ!!おにいさんすごい!!!」 これがゆっくりブレインか……よく生きていられるな。 「じゃあ見つかったまりさも俺がだっこしていてやろう」 「ゆっくりだっこしてね!!!」 「おそろい!おそろい!!」 片腕で何とか抱えて残りのちびゆっくりを探す。 奴らは体が小さい分難易度が高いが、所詮はゆっくり。簡単に次のを見つけた。 「ちびゆっくりれいむ、見ぃつけた」 そう言ってゴミ箱に隠れていたちびゆっくりを空いた手で掴む。 「ゆっくりみつかっちゃった!!!」 「おにいさんほんとうにすごいね!!!」 「ゆっくりかくれんぼのめいじんだね!!!」 「それじゃ、見つかったちびゆっくりちゃんは罰ゲームだ」 「ゆ?」 ちびゆっくりを口の中に放り込む。途端、ゆっくりれいむが物凄い形相で叫ぶ。 「なにするの!!おじさんやめて!!ゆっくりはなしてあげて!!」 おじさん、だと…?一瞬このまま殺してやろうとも思ったが、思いとどまって口の中を見せる。 「ゆっくりあったかいよ!」 「何勘違いしてやがるんだお前は」 「ゆっくりまちがえちゃったよ!!」 口の中でちびがもぞもぞ動く感覚が面白い。舌で転がしてやると喜んでいるようだ。 そんな風に舌で弄びながらちびゆっくりを探し、見つける度に口の中へ放り込む。 あっという間に十匹とも口の中へ。何てチョロいんだ。 「あっというまだったね!!!」 「ゆっくりするまもなかったね!!!」 そんな風に賞賛する親ゆっくり二匹。愚かな奴らだ。ゆっくりするのはこれからだというのに。 「じゃあ、ゆっくりあかちゃんをはきだしてね!!!」 ああ、吐き出してやるとも。頷いて、床に文々。新聞を広げ、二匹を両手でがっちりホールドする。 そして、口の中できゃっきゃと遊ぶちび共を一気に噛み砕く。プチプチという感触が気持ちいい。 口の中から物凄い悲鳴が聞こえる。ククク痛かろう怖かろう。 「お゛じざん゛や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 「はや゛ぐだじであ゛げでね゛!!さっさとだずげであ゛げでね゛!!!」 そうかそうか吐き出して欲しいか。じゃあそうしてやろう。 新聞紙の上に噛み砕いたちび共を吐き出す。先程まで賑やかだった連中は、今や苦しみの声を上げるだけの醜い塊だ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!れ゛い゛む゛の゛あ゛がぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「うわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ゆ゛っぐ!!ゆ゛っぐり゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 大変喜んでいただけたようで満足です。その後もねっとり言葉責めして反応を楽しむ。 やっぱゆっくりの活用法は食用じゃなくて愛玩用がベストだよな。 気の済むまで言葉責めする頃には、親二匹は廃人、いや廃饅頭になっていた。目は空ろで口をぱくぱくさせている。金魚みたいだ。 「じゃあこれを片付けないとな」 「ゆ゛ぶふぅっ!!?」 「ぐお゛え゛ぇ゛!!」 まだ半数くらいは息があるちびゆっくりの塊を二匹の口の中に押し込み、口を塞ぐ。 「「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」」 二匹とも物凄い勢いでもがく。さっきまでの様子が嘘みたいだ。ああ楽しい。もっと鳴いてくれ。 しばらくすると二匹ともしっかりちびゆっくり共を嚥下した。これでやる事は大体やったな。 「それじゃあ行こうか糞饅頭共」 「ゆ゛っ……ゆ゛っぐ……?」 「どごに゛…どごに゛い゛ぐの゛……?」 「勿論ゆっくり加工所さ。お前らゆっくりしたいんだろ?好きなだけゆっくりさせてやるよ」 「い゛や゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!がごお゛じょはい゛や゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「も゛う゛い゛や゛だ!!ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛がら゛お゛う゛ぢがえ゛る゛!!!がえ゛る゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「そんなに嬉しそうに鳴くなよ、興奮するなぁ。何か良い事でもあったのかい?」 軽薄な感じで話しかけるが、もうこちらの声など聞いていないようだ。 肩をすくめ、山菜取り用のかごに二匹を詰めて蓋をして出かける。 道中、何やらゆっくりまりさがゆっくりれいむを攻め立てていたようだ。ひどい奴だ。俺からすれば同罪なのに。 日が高くなりつつある空を見上げて、かごの中のやりとりを楽しみながらゆっくりと加工所に歩いていった。 "Repaying the kindness" is COMPLETE!!
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とある施設の一室でそのゆっくりは目を覚ました。 周囲を見渡すと自分と同じ形のゆっくりと黒い三角帽子をかぶったゆっくりが複数いる。 ほとんどのゆっくり達はまだ眠っているが数匹のゆっくりは目を覚ましていた。 部屋の中心には黒ずんで朽ちたものがあったが何かはわからなかった。 「ゆっくりしていってね!」 一匹のゆっくりが大きな声で叫んだ。それがまるで合図であるかのように寝ていたゆっくり達が目を覚ます。 「ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆ・・・」 次々とゆっくり達は目を覚ましていく。数分のうちに部屋にいるゆっくり達はすべて目を覚ました。 ゆっくり達はここが何処だかわからずキョロキョロと周りを見回している。 その時部屋の隅にある扉が開き一人の年配の男が入ってきた。 ゆっくり達が男に話しかける。 「ゆっ!おじさんだれ?」 「ここはどこなの?」 ゆっくりが達が尋ねると男が説明を始めた。 「こんにちは。ここはゆっくり繁殖場だよ」 「繁殖場?」 「最近天然のゆっくりが乱獲されて数が激減していてね、ここは数が減ったゆっくりを繁殖させて野生に返す施 設なんだよ。君たちのうち赤いリボンをしているのがゆっくり霊夢、黒い三角帽子をしているのがゆっくり魔理 沙と言うんだよ。そして君達はたった今生まれたばかりなんだ。だからここがどこだかわからなかったんだよ。 でも安心してゆっくりすればいいよ。」 まだ何の知識も持っていないゆっくり達は素直に男の言うことを信じ飛び跳ねて喜んでいる。 「そうそう、生まれたばかりでお腹が空いているだろう?食べ物を持ってきたよ。」 男は持ってきた和菓子や洋菓子をゆっくり達の前に置いた。 「おいしい!」 「うっめ!」 「メッチャうっめ!」 ゆっくり達は満足そうに与えられた食べ物をたいらげた。 男は部屋から出て行く際に、 「外は危険だからこの部屋から出てはいけないよ。外から危険なものが入ってこないようにこのドアには鍵をかけ ておくよ。」 ゆっくり達は男の言うことを素直に聞き入れゆっくりしている。そしてお腹がいっぱいになったせいか眠りにつ いた。 次の日、また男が部屋に入ってきた。ゆっくり達は歓迎する、 「おじさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり遊んでいってね!」 ゆっくり達は無邪気に飛び跳ねている。すると男は、 「今日はこの部屋にいる君達の半分を別の部屋へ移動させるよ。これだけの数がいると狭くて住み辛いだろうから ね。」 ゆっくり達は仲間が少なくなるのはいやではあったが、男の言うとおり部屋が狭いと言うことと、信用している おじさんが言うことなので素直に従った。 5分後、部屋にいたゆっくり達の半分は男の入ってきた扉から出て行った。 残ったゆっくり達は寂しそうだったが、部屋が広くなったのですぐに部屋を飛び回り喜んだ。 その後ゆっくり達は毎日やさしいおじさんに食べ物をもらいゆっくりとすごした。 -2週間後- ゆっくり種というのは成長が早いらしく2週間で生まれた時の3倍もの大きさになっていた。以前に比べると広 かった部屋も全員が自由に飛びまわれなくなってしまっていた。 いつものように男が入ってきた、 「おじさん、ゆっくりしていってね!」 まだご飯の時間ではなかったのでゆっくり達は不思議そうにしている。すると男は、 「そろそろ外の世界に慣れさせる頃だね、明日から一匹ずつこの部屋から出てもらうからね。」 「ゆ!!!」 ゆっくり達はびっくりした。2週間優しく世話され満足な生活をしていたため生まれた日に説明されたことをす っかり忘れていた。 「数が減っているゆっくり達の数を増やすために必要なことなんだ。わかってくれるね?」 ゆっくり達は不安そうな顔をしている。 「大丈夫だよ、すぐには野生には返さないから。ゆっくり慣れてもらうつもりだから安心していいよ」 おじさんの優しそうな笑顔を見てゆっくり達はいつもの陽気な顔に戻っていった。 「それじゃ明日から一匹ずつ出てもらうからね。緊張せずにゆっくりしてればいいよ」 そう言って男は出て行った。 そして次の日から一匹ずつゆっくりが外の世界へ旅立っていった。 -数十日後- 部屋にはゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の2匹だけになっていた。部屋から出て行ったゆっくり達がこの部屋に 戻ってくることはなかった。2匹は早くみんなのもとへ行きたかった。もうすぐおじさんがやってくる頃である。 扉が開く、 「やぁ、2匹で寂しい思いをさせて御免ね。今日はゆっくり霊夢の番だよ。抱えて部屋からでるから静かにしてい ておくれよ。」 「おじさん、ゆっくりしようね!」 男はゆっくり霊夢を抱え部屋から出て行こうとする。ゆっくり魔理沙は、 「もっとゆっくりしていって!」 と叫ぶが男はそれが聞こえなかったかのように部屋を出て行った。 部屋から出てしばらく歩くと目の前にゆっくり魔理沙を抱えた金髪の女性が立っていた。 「今日もゆっくりしようね!!!」 ゆっくり霊夢は無邪気そうにしている。 その時! 「では始めます」 おじさんがそう言った瞬間ゆっくり霊夢は宙を舞っていた。 「ゆっ、ゆっくり!?」 ゆっくり霊夢は驚愕の表情で何が起こったかわからないままおじさんとの距離がどんどん遠ざかっていく。 その時なにやらやわらかいものにぶつかりぽよんとはねてコロコロと転がる。 ゆっくり霊夢は目の前で巨大なゆっくりがのっそりと動くのを見て、叫ぶように、 「ゆゆゆゆゆゆっくりしていってね!!!」 といって投げられた方向に向かって一目散に飛び跳ねていく。はじめて見るものだが本能が危険だと言っている ようだ。そして扉にたどり着くが開かない。 「早く扉を開けてね!!! 」 ゆっくり霊夢の後ろでは巨大なゆっくりが飛び上がって向かってくる。 「早くして!お願い!おじさん!たずげでぇぇぇぇぇぇ!」 ゆっくり霊夢は顔がくしゃくしゃになるほどに号泣し、おじさんに哀願している。 そんなゆっくり霊夢を尻目に巨大なゆっくりはその巨体に見合うだけの分厚い下のびろーんとのばしゆっくり霊夢 に巻きつける。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 号泣するゆっくり霊夢は悲しげな絶叫を残して巨大なゆっくりの中へ飲み込まれていった。ゆっくり霊夢は見た、 数日前まで自分と一緒の部屋で暮らしていたゆっくり達がそこにいた。ほとんど原型を残さないほどばらばらで 意識がないもの、大部分がくずれているがまだ意識はあるもの、少し皮がなくなり中身の餡子が見えているもの。 意識のあるものはみな号泣していた。そして巨大なゆっくりの口が開いたとき信頼していたおじさんが見えると、 みんな視線をおじさんに向け、 「おじさんだずげでぇぇぇ」 「もっとゆっくりぢたいよー」 「ここからでだいー」 と哀願する。 しかし男はゆっくり達のしっているおじさんではなかった。まったくゆっくり達には興味がなさそうに金髪 の女性と話をしている。 そして無慈悲にも巨大なゆっくりの口が閉じられ中は暗闇で満たされる。 ゆっくり達は、意識がなくなるまでの数日間この絶望的な状況でただひたすら号泣することしかできないのであっ た。 End 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでくださった方々、まずはお礼を申し上げます。 6月頭にある画像掲示板でゆっくりがいじめられている画像を見て。他にないものかと探し、この掲示板までたど り着きました。そして過去スレの“ゆっくり加工場”のtxtを読み衝撃を受けました。 そして誠に勝手ながら加工場の設定をお借りし、素人ながら文章を書かせていただきました。 加工場の文章を考えた方へ このたびあなた様の作成されたゆっくり加工場で巨大ゆっくりレティに食べられる霊夢の生涯を勝手に書かせてい ただきました。もしこのことにお怒りでしたら、この場をかりてお詫び申し上げます。 みなさんが希望するのならば、ゆっくり達が生まれた次の日に部屋から連れて行かれたゆっくり達がどうなったか を書きたいと思います。 あと、ゆっくり達が生まれたときは小さくて2週間で大きくなるというのは物語の都合上私が勝手に考えた設定で すのであしからず。 ゆっくり加工場系15 ゆっくり魔理沙の生涯『加工編』
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前編 終わりも始まりもない 目を覚まして立ち上がろうとして久しぶりにかがみと一緒に寝たなぁと思った。 一年やそこらぶりではなかった。就職する前、大学生といってもまだまだ高校の頃のように遊んでいた時以来。 かがみはクッションだったりぬいぐるみだったり抱きつき癖があった。 寂しんぼさんなんだからと言っていた。昔真っ赤になって否定していた彼女もほんの少し認めてる。 今もこうしてすっぽり抱えられて、あの頃から全く成長していないことに嘆くべきか。それともかがみにとって安心できる存在だと自惚れてみるか。 意外とぐっすり眠っている。小さな規則正しい寝息が髪にかかる。 起こそうかもう少し寝かせとこうか。迷った挙句いつの間にか再び夢の世界に落ちていた。 結局かがみが先に起きる形になってからかうことはできなかった。 寝ぼけ眼の無防備なかがみじゃなくて、普段のようにきちんとした状態で、なぜか私の隣で。 呆れているようでいて優しさを含んだ声。ちょっと起きるのが惜しかった。 まぁだけど、頬をつっついてきたり髪をいじられたりしたらくすぐったくて寝られない。 「おはようこなた。相変わらず可愛い寝顔してたわよ」 「……かがみのえっち」 肘をついてにやにや笑っているかがみが目の前にいる。あの頃と何ら変わってなかった。 「というか着替えまで済ませてるくせになんで隣で寝てるのさ」 「いいじゃない別に。こなたは年を取らなくて羨ましいなーって」 「正直に全然成長していないって言ってくれていいから」 どこに行くにも身分証明に免許を常に携帯していないと大変だし。 ようやくかがみが体を起こす。ツインテールをやめたサラサラの長い髪は大人の女性っぽさを感じた。 いつからだろうか、確か大学に入ってからはポニーテールが中心だった。そして結わってかわいらしさを意識するのは少なくなった。 相変わらずの長くて長い自分の髪に触れる。毎朝寝癖がひどくて。 鏡に映る自分の姿。私はお母さんに近づけているのかな。 「こなた、どうしたの」 「なんでもない。着替えるから向こう向いててよ」 「ん、わかった」 薄紫の髪。ちょっと大きくなって見える背中。 普段より少し着替えるのに手間取った。 「一応ちゃんと自炊しているみたいね」 私の作った朝食を前にしてかがみが言った。 「これでも家事全般は小さいころからやってきてるからね。別に面倒だとも思わないわけですよ」 「そっか。あんたが一人暮らししたらぐーたらな趣味三昧の毎日になると思ってたけど」 「失礼ですなー。そういうかがみは料理の腕、少しは上達したのかな?」 「うっ。なんとかカレーとか肉じゃがならできるように……」 なんという定番な。男が喜ぶ女の子の手料理ベストスリーに入ってるじゃん、それって。 食べてみたいな、なんて思ってしまって。「かがみは誰に作ってあげるのかな?」とかいうバカな質問をしそうになった。 「こなた、美味しいよ」 「ん、んぐっ。あ、ありがと」 そんでもってかがみが急に褒めてくれるもんだから、ちょっとむせてしまったじゃん。 素早い動作でお茶を差し出される。これでめちゃくちゃ熱かったらコントかって感じだよ。 何やってんのよもうって感じの表情のかがみ。高校時代はどれだけこんな顔をさせてしまっただろう。でも本当は誰よりも優しかった。 心の中の小さなそれは決してなくなりはしなくて。 「あのさ、かがみ」 「うん?」 「今日時間ある? 久しぶりだしさ、どこか出かけようよ」 「もちろんよ。せっかく会いに行く機会なんだからそれくらい予定に入れてたわ」 言って歯を見せて笑った。思わず目を細めてしまうほど眩しかった。 高校時代に何度も行ったアニメショップとかのある場所じゃなくてまともな中心街を歩いていた。 別名オシャレ通りなんて呼び名もあるそうな、きらびやかな街並み。 ただ滅多なことでは行かなそうなアクセサリーショップも、道行く若者のファッションを見てても、私は違う世界の住民なんだって思う。 私の隣を歩くかがみには何も違和感なんて感じなかった。むしろ他のどの女の人よりも綺麗なんじゃないかって。 こんな美人と友達で私はなんて幸せ者なんだろう。 ほんの数センチだけど高くなった横顔。頬から顎のライン。紅い唇。 「ん? どうかした、こなた」 「な、なんでもないっ」 簡単に目を奪われてしまう。どれだけ見ていたかなんて自覚できてない。 顔を見られたくなかった。赤くなってるはず。ちょっと早足になった。 カッカッ。ヒールの鳴らす音のリズムが若干速くなって追いかけて来てくれた。 別に目的とか買いたい物とかがあったわけじゃなかった。ひたすらに歩く。 半歩先を歩く背の低い男の子みたいな格好をした私。メイクしてちょっぴり香水のいい匂いを振りまくかがみ。 何やってるんだろうって思いながらでも立ち止まるわけにはいかないし。 「ちょ、ちょっとこなた」 何度目かわからない私の名前を呼ぶかがみ。それから柔らかな感触が左手に。 「もう待ちなさいよ。急ぐ理由なんてないでしょ」 「えっ、あ、うん。そうだね」 「なに。……ああ、こうしてたら迷子にならずに済むんじゃない」 繋いでいる手を掲げて見せてきた。顔がどうしようもないくらいに笑ってる。 恥ずかしかった。悔しかった。だけど嬉しいと思ってしまう自分がいた。 何も言わない私によしとしたのかかがみが歩き始める。 今朝もそうだったけどかがみの手ってあったかくて。人の体温だから大差ないとわかっているからなんかずるい。 ずっとこのままでって思いたくなるような安心感を与えてくるんだもん。 前を歩くかがみの背中を見つめながら歩いていた。 「ほらこなた、次はこれ着てみなさいよ」 かがみが満面の笑みで超の付くほどのミニスカート勧めてくる。 きわどいってレベルじゃないですよかがみさん。手に持ってるとただの布きれみたいだし。あと、顔が近いよ。 さすがに強く拒否を示したら諦めてくれて、でも次はフリフリの私には似合わないでしょってやつを持ってきて。 いったいこれで何着目なんだろう。なんていうか個人的なファッションショーになっちゃってるよね。 事の始まりはなんだったのだろう。私が引き起こしたのかもしれない。 何人もの人とすれ違ったけどかがみは全然見劣りしなくて。そんなかがみと私は手を繋いでて。 私たちはどんな風に見えるのだろう。絶対同級生に見えないよね、姉妹とか。もしかしたら母娘とか。 ふとかがみとは反対側に視線を移すと高そうな服が売っている店が並んでいる光景で。 そしてそこのショーウインドウに二人の姿が映り込んでいて。 「どこからどう見ても小学生にしか見えないよね」 「……どうしたの?」 呟いていた。足も止めてしまった。 「んー、こうして見ると私たち姉妹みたいじゃん、なんてね」 鏡みたいに綺麗に映るわけじゃないけど、並んでいる二人の女の子は身長だけじゃなく服装にも差があった。 あはは、と声にしてもそこにいる私は笑っていなかった。 「──たは──わよ」 「えっ?」 「こなたは絶対磨けば光る。いい? 今から私が証明してあげるから」 暴走機関車のごとくかがみはそのまま目の前の店に突撃していって。現在に至る。 「かがみ、私用のを選んでるんじゃなくて、着せ替え人形みたいに楽しんでるだけでしょ、絶対」 「そんなことないわよ。だいたい服を選ぶのって適当に着れればいいじゃだめなのよ。似合う服を着たらもっと自分が好きになるし、見える世界だって変えてくれるんだから」 「そ、そういうもんかな」 「そういうものなの!」 力説するかがみはかわいいなぁ。今さらだけど。 なんて思ってみてもどうやらこの着せ替えごっこはまだまだ続くらしくて。 そしてなんだかんだ言いつつもかがみに可愛いって言われると嬉しくなる自分がいるわけで。 お店に居座ること二時間近く。で、お会計がほんとうにたったの一着という結末に店員さんは呆れるしかなかったようだ。 まぁ、私も疲れたけれど、その服はかがみからのプレゼントです、となると自然と頬は緩む。 とりあえず絶対にタンスの肥やしにしないこと、と心の中で誓ったのだった。 かがみの言う可愛いと私のかがみに対するかわいいは違うんだってわかってはいる。 それにたぶん久しぶりに会ったことが気持ちを高揚させたりしているのかもしれない。呆れ顔、怒った顔ばかり昔はさせていた。 けれど今この時がすごく楽しいっていうのに嘘はつけない。どうしようもなく私はかがみが好きなんだと自覚する。 たまたま通りがかった公園。ぶらぶらしているだけだったし、多少疲れてもいたので寄ることにした。 かがみは飲み物を買いに行ってくれている。今日という一日の中で初めての一人の時間だ。 昨夜のことは覚えている。好きな人が他の誰かと結婚することになった。 心からの祝福はできなかった。でも認めないなんて言えない。その理由を言うことすら叶わない。 かがみの気遣いが嬉しかった。親友だって言ってくれて嬉しかった。今過ごしているひとときは幸せだった。 かがみが好き。伝えられない言葉。静かな公園で呟いた。どこにも響かずに消えていった。 「はい、スポーツドリンク。コーヒーとかのがよかった?」 「ううん、なんでもよかったよ。ありがと」 手渡されたペットボトル。ひんやりとした感触が気持ち良くて、頬にあてたりした。 かがみはよほど喉が渇いていたのかすぐに飲み始める。喉を鳴らしていた。 ぐっと上を向いて飲む姿が男勝りというか、少しおかしかった。左手で掴んだペットボトルの中身が一気に減っていく。 「あっ」 思わず声に出していた。左手の薬指。 「どうかした?」 「なんでもないよ、なんでも」 「そう? なんか今日のこなたは少し変ね」 誤魔化してドリンクをちびちびと飲むことにする。冷たく染み込んでくるけど冷静さを取り戻してはくれない。 もう一度盗み見た。やっぱりしていない。記憶を掘り返してみてもそれらしい何かを見せてもらってはいなかった。 だからといって、何かが変わるわけでもないじゃん。 でも、聞かずにはいられなかった。 「ね、ねぇ、かがみ」 「なに」 もう長いこと会っていなかった。メールのやり取りでも深く聞いたりしていなかった。 相手はどんな人なのか、いつから付き合っているのか。結婚式の日はいつなのかも、何も知らない。 「あのさ、こ、婚約指輪とかって、もらってないの……?」 かがみは確かに綺麗になった。優しくなった。その理由が恋人ができたからだと、信じたくなかった。 かがみの頬が赤く染まった。初めて会った時からそうだ。普段はどんなに厳しくても、ちょっとツリ目でも、感情がすぐ表に出る。そこがかがみのかわいいところ。 「え、えっとそれは、その……」 目が泳いでいる。追いかけた。目があった。 じっと見つめた。離さない。また少しかがみの顔が赤くなった気がした。 私たちの間を沈黙が支配する。ただ私は逃げるつもりはない。 「ご、ごめんなさいっ、こなた」 「えっ」 今朝のようにあたたかい何かが私を包んでくれている。 かがみが、私を抱きしめていた。 「な、なに、どうしたのかがみ」 「ごめん、本当にごめん。あれ、全部嘘だから」 状況の変化についていけない私は両手の行き場も思いつかずにいた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「数日前から考えていたんだけど、長いこと会っていないんだからサプライズにしなくちゃって思ってさ」 「ええと、結婚の話の前にもう一つ。もし私がいなかったらどうしたの?」 「そりゃ帰ってくるまで待つに決まってるじゃない」 「その日帰ってこなかったとしても?」 「当然よ。だってこなたの──きなんだもん」 「? で、なんで結婚するだなんて嘘ついたの。もう驚くどころじゃないし」 「そ、それは、その……」 こなたがじっとかがみを見上げていた。数分にもおよんで。 「ああ、もうっ。それ反則よ、こなた。我慢できるわけないじゃない」 「ふぇ、かがみっ?」 かがみ、こなたを力一杯抱きしめる。もう抱え上げてしまうくらいに。 こなたはただただ困惑していた。 「こなたの泣き顔が見てみたかったのよ。結婚なんてしない、付き合っている男もいない。だって私はこなたが好きだから」 「ば、かっ。かがみの、ばか……っ!」 「こ、こなた……? な、泣いて……?」 「ばかばかばかっ。かがみなんて、かがみなんて、だいっきらいだ」 「ごめん、こなた。私素直じゃなさすぎたわ。もう一度言うから、聞いてくれないかしら」 「うん」 「こなた。私ね、こなたのことが好きよ」 「っ、かがみぃ……」 こなたの行き場を失っていた両手は自然とかがみの背中に回されて。 二人のなかに身長差などは関係なかったのだ。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b ったく、驚かせやがってw...うぅ、なんで涙止まんねぇんだよ... -- 名無しさん (2023-08-07 00 36 51) ご都合ではあるけど、やっぱこなたはかがみの嫁だよな 悲恋もいいけどハッピーエンドが一番! -- なこ太 (2010-10-03 15 38 00) ハッピーエンドでよかったぁ -- 名無しさん (2010-08-21 16 51 38) よかった…かがみに彼氏はいなんだ…。 前作だけでも存分に良い作品だけどね。 -- こなタックル (2010-06-30 09 28 54) かがみったらやってくれますねwww 何はともあれこなたが救われてホッとしてます。 前作からの作者様のコメント拝見しました。 多くの葛藤があったと思います、作品を読ませて頂いてる身で偉そうな事は言えませんが、 御自身が納得される作品をお書きになれば良いのではないでしょうか? 私個人的にはあなたの作品はどれも大好きです、いつも新作を心待ちにしてます。 これからも応援する気持ちと共に、GJ!!をおくらせてもらいます。 -- kk (2010-06-29 22 26 41) 前作にて、かがみの事がすごく好きなんだけどもうどうにも ならず、とてもつらいこなたの心情がすごく表されていた ので、今回救われる内容で正直ホッとしました。 GJです。 あと関係ないですが、私的にはタイトル名 『ごめん、なかったことにして』 でも良いような気がしました。 …はい、完全に蛇足ですね。失礼しました。 -- 名無しさん (2010-06-29 20 35 30) いつの間にか続編出ていたんですね ハッピーエンドで本当に良かったとしか言い様がありません…、素晴らしい!! -- 名無し (2010-06-29 20 26 25) happyendで良かったです… ほんとにかがみんてばツンデレなんだから… 下手なサプライズよりも大事なものを強引に奪い取る覚悟を決め立って下さい -- こなかがは正義ッ! (2010-06-29 12 31 37) よかった… ホントによかった!! -- 名無しさん (2010-06-29 08 00 09) 『終わりも〜』は過ぎる時間の無情さが好きでした。 ちょうどリアルで離婚した後に読んだので、かがみが結婚を告白するシーンには、強く心を掴まれました。 だから、余計こなたには好きな人が居なくなる辛さは味わって欲しくないな……なーんて考えてましたよw なので、『小さな〜』を読んで気持ちが楽になりました☆ こなたとかがみの時間が始まってくれて、ほんとに良かった。 もう後悔するような選択はするなよ!こなた☆ っと言ってやりたいw 作者様、GJでした! -- ♪ (2010-06-29 00 15 43) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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道を歩いていたら茂みから体高30cmほどの変なものが飛び出してきた。 「「ゆっくりしていってね!」」 姿を現したのはゆっくりと呼ばれている下膨れの顔饅頭が2匹。 一方は赤いリボンを頭にのっけた黒髪で、もう一方は黒いとんがり帽子と長い金髪が特徴的なゆっくりだった。 どちらも見ているだけで妙にイライラさせられる笑みを浮かべている。 「「ゆっくりしていってね!」」 聞くところによると、こいつらの仲間はこの言葉を聞くと同じように「ゆっくりしていってね!」と返すらしい。 突然の状況に呆然として、その返事をしなかった俺の態度を無視しているものと勘違いした2匹は再びその言葉を口にする。 今度はさっきのような純然たる笑顔ではなく、少し目元がつりあがっていてどこか怒っているようにも見える表情で。 ぴょんぴょんと意味も無く跳躍を繰り返しながら、何度も「ゆっくりしてい」ってね!」を連呼している。 「ゆっくり・・・ゆぎゅ!?」 あまりに鬱陶しいので思わずより近くにいた赤いリボンを付けた方を軽く蹴り飛ばしてしまった。 蹴られたゆっくりは4mほど吹っ飛ばされ、4mほどバウンドし、更に4mほど転がって計12mほど向こうまで飛んでいく。 思った以上に軽く、弾力があり、転がりやすいその体ならではの飛距離だろう。これは面白い。 「ゆううう!ゆっぐぢーーー!ゆっぐぢでぎないよおおおお!」 「ゆーっ!まりさのれいむになにするのー!?」 なるほど、黒髪のほうはれいむで、金髪のほうはまりさと言うらしい。 れいむは蹴られた痛みのせいか身動き一つとれずに泣きじゃくっている。 一方のまりさは俺の前に立ちはだかると空気を思いっきり吸い込んでぷくぅっと頬を膨らませた。 そうやって威嚇しているつもりらしいが人間相手には何の意味も無い。 まりさの前にしゃがみこむと右手で頬に平手打ちを食らわせ、即座に反対側の頬にも平手打ちを食らわす。 「ゆうううううう、ゆぎぃ!・・・ゆぎゅ!・・・ゆぎゃ!・・・ゆげぇ!」 俺が手を振るたびにまりさの膨らんだ頬に挟まれた口から呻き声と空気が漏れ出していく。 右!左!右!左!右!左!右!左!右!左!右!左! 右!左!右!左!右!左!右!左!右!左!右!左! 右!左!右!左!右!左!右!左!右!左!右!左! 何度も何度も平手打ちを繰り返し、掌が痛くなってきたところで手を止めた。 「ゆ、ゆ・・・ゆびぃ・・・」 「や、やめてえええええ!でいぶのまりさをいぢめないでえええええええ!」 頬は腫れ上がり、顔中青だか赤だかわからない色に染まり、白目をむいて泡を吹くまりさは一目でわかるほどに満身創痍。 やりすぎたか、と少し後悔していると今度はようやく痛みから立ち直ったれいむがまりさを守るべく声を上げてこちらへやってくる。 ぽよん、ぽよん・・・と1m進むのに5秒はかかる信じられないほどの鈍足で吹っ飛ばされたわずか12mの距離を1分かけて戻ってきた。 そうして、ようやくまりさの前に立ちはだかったれいむは荒い呼吸を整える暇もなく俺に体当たりを仕掛けてきた。 「ゆーっ!ゆんっ!ゆゆーっ!」 顔を真っ赤にして自分の大事な仲間を傷つけた俺に何度も何度もぶつかって来る。 弾かれても弾かれても起き上がってはキッと俺を睨みつけて体当たりを繰り返すその姿は実に果敢だ。 しかし悲しいかな俺に全く効いていない。 それでもれいむはぶつかっては弾かれ、起き上がってはまたぶつかるを繰り返し続ける。 その目にはうっすらと涙がにじんでいて痛みを必死に堪えていることが伺える。 なんだか気の毒になってきた俺は何度目かの体当たりを仕掛けてきた際につま先で引っ掛けるように蹴り上げてやった。 「ゆゆっ!た、たかいよーっ!?」 突然の浮遊感に驚いたれいむは下を見た瞬間に、自分が空高く舞っていることを理解した。 その高度約4m。同時にその高さから落下すれば相当痛いこと理解し、恐怖のあまりに悲鳴を上げる。 「ゆびぇえええええええええええええ!!?」 そうして最高到達点に達したれいむは、徐々に地面めがけて落下していく。 やがてやってくる痛みに備えて目をきつく閉じ、身を小さくしている彼女の体を小刻みに震えている。 「ゆううううう・・・ゆぅ?」 しかしいつまで経っても痛みはやってこなかった。 そのことに疑問を感じたれいむが恐る恐る目を開けると、そこには俺の顔。 流石にこれは死ぬかもしれないと思った俺は落下する前こいつを受け止めたのだ。 ようやくその事を理解したれいむが満面の笑みを浮かべた瞬間、思わず彼女を放り投げた。 「ゆうううううううううううううううううううううううううううう!!?」 ただし、あくまで低空で、バウンドと転がった分によって移動距離を稼ぐようなそんな投げ方。 れいむは俺の狙い通り、あまり舗装されていない地面をごろごろと転がっていった。 「ゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・」 「れいむうううううううううううううう!?」 遥か彼方、と言っても50mほどなのだが、まで転がっていったれいむの名を叫ぶのは頬の痛みから立ち直ったまりさ。 散々一方的に酷い目に合わされ、どんな抵抗も無意味だと理解したまりさは攻撃を仕掛けてくることも威嚇することもしない。 ただ、目から大粒の涙をぼろぼろと零し、きゅっと結んだ口からは嗚咽が漏れている。 「ゆっく・・・まりさたちなにもぢでないよ・・・もうやべでよ、ゆっくぢさせでよぉ・・・」 その声がどんどん涙声になってゆき、やがて泣き声になる。 体裁も見栄も何もかもかなぐり捨てて、まりさはただひたすら大声で泣きじゃくる。 そうすることで「お願いだからゆっくりさせて」と必死に訴え続けていた。 「ゆわあああああああん!ゆうううううううううん!ゆっぐ・・・ゆぅ・・・」 それだけしか出来ない彼女のその姿のなんと弱々しいこと。 何の意味も無く自分達を痛めつけた悪党相手にただ泣きじゃくって許しを請うとしか出来ない。 哀れんでもらって、それから見逃してもらう・・・それだけが唯一の生き残る道なのだ。 「ゆえええええええええええええん!ゆああああああああああん!ゆぎぃ・・・ゆぐぅ・・・」 正直、その泣き声が鬱陶しくなってきた俺は大きく開いた口に足を突っ込むと舌と下あごを力任せに踏みつける。 必死の命乞いを無視されたまりさは恐怖と絶望と苦痛と不快感で白目を剥き、ほぼ塞がれた口で必死に何かを喋っている。 それが恐らく相も変わらずの命乞いであることは容易に想像がつくが、それに従うくらいなら最初から何もしない。 まりさの懇願を完全に無視して口内をひとしきり蹂躙しつくしたところで、俺はまりさをれいむめがけて蹴り飛ばし、2匹を解放してやった。 「まりさああああああ・・・!」 「れ、れいむううううう・・・!」 涙を流しながら頬をすり寄せ合って、互いの無事を喜ぶ2匹。 しかし、俺がゆっくりと2匹のほうに歩いてくることに気づくと、必死の形相で茂みの奥へと逃げていった。 「もうやだ!おうちかえる!」 「ゆ、ゆっくいかえるよ!」 もうこれ以上虐めるつもりは無かったのだが、その言葉を聞いた瞬間に食指が動いてしまった。 あいつらの家とはどんなものなのだろうか?他にも仲間がいるのだろうか? そんな好奇心に駆り立てられて、非常に緩慢な動きで近くの森へと向かうれいむとまりさのあとを追いかけることにした。 「ゆっくりかえったよ!」 「「「「おきゃーしゃん、ゆっくりちちぇっちぇね!」」」」 「「ゆっくりしていってね!」」 結論から言えば、この家族は群れなどに属していないようだった。 その代わり、愛らしい子どもが4匹もいるようだ。内訳はれいむ種もまりさ種も2匹ずつ。 れいむ達の巣は彼女達の体格同様に小さくて、人間の俺では中に入れそうに無い。 お菓子の一つもあれば簡単におびき出すことが出来そうだが、今は何も持ち合わせていないので諦めることにした。 「しかし・・・ゆっくり虐めか・・・」 新しい楽しみを見つけた俺は足取り軽くスキップをしながら来た道を引き返した。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ シンプルさを重視したので子ども達への虐待はなし。 ストレスで寿命がマッハだぜ、と言う方は脳内でどうぞ。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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暴言タイプワード一覧 足りない単語は、コメント欄で教えていただけると嬉しいです 以降汚い言葉が続きますがご了承ください NGワードについては(NG)の表記を入れています。 あ行 あなる、あこぎ、あほ、あく、あくとう、あま いしあたま、いぎょう 社会、いちいち、いんわい、いんじゃ、いんぎんぶれい 感情、いなかもの、いくじなし、いやみ、いのちしらず、いんぽ、いやがらせ 暴力、いらまちお、いんきゃ、いらな、いらない、いんぴ、いいあらそい 社会、いらち、いっぱつや、いいだしっぺ、いれぢえ、いいがかり、いきすぎ、いなかっぺ、いんしつ、いまらちお うまのほね、うりことば、うりことばにかいことば、うんどうおんち、うんこ、うんち、うせろ、うっす、うざい 感情、うじ 虫、うじむし 虫、うよ 社会、うらぎりもの、うすのろ、うれのこり、うまづら、うちべんけい、うわっつら、うすげ、うしろゆび、うるさい 感情、うわきもの、うぐ、うちわねた、うわづみ えろ 暴力、えごいずむ 感情、えこひいき おな、おなにー、おぶつ、おたく、おおぐち、おまえ、おもなが、おーるど か行 かんとんほうけい 人体、かまちょ、かす、かんぷ、かえるのこはかえる、かれいしゅう きじょうい、きらきらねーむ、きやすめ、きれいごと、きぶんや、きちく、きざ、きんたま、きえろ、きもい、きたくぶ、きらわれもの、きちがい(NG)、きかんぼう、きにゅう くそ、くそみそてくにっく 暴力、くそくらえ、くそったれ、くんに、くたばれ、くうり、くるくるぱー、くちさき、くいしんぼう、くず、くちべらし、くそげー、くちゃらー、くずやろう けなし、けんかごし、けしずみ、けだもの 動物 こしゃく 感情、こび、こざいく、ころす(NG) さ行 さいてい 感情、さいあく 感情、さいこぱす しね、しぬ、しな、しんけいしつ 感情、しりめつれつ、しっかく、しばく 暴力、しわ 人体、しっこ、しんで、しりがる すまた 人体、すらむ、すっとんきょう、すけべ、すてごま、すっとこどっこい、すきっぱ せくろす、せくはら 社会 そまつ、そあく た行 たんき、たいそう、たられば、たんそく、たんさいぼう ちび、ちーぎゅう、ちつ 人体、ちみもうりょう、ちんぷ、ちせつ、ちじょ、ちんかす 人体、ちんげ 人体、ちくしょう 動物、ちんこ 暴力、ちしょう、ちろう、ちんき つくりもの、つまんね、つくりばなし、つみつくり、つちぐも てこき、てき とんま、とりあたま な行 なきごと、なかだし 暴力、なまごみ、なきむし、なまいき、なんじゃく、なまけもの 動物 にんげんせい、にわか、にせもの、にもつ ぬすっと、ぬるい ねくら、ねらー、ねこぜ 人体 のんべえ、のうなし、のうてんき、のっぽ 人物、のろ、のろま は行 はげ 人体、はんぱ、はなくそ 人体、はめ 暴力 ひす、ひすてりー、ひゃくがい、ひきょう 感情、ひかげ、ひも ふーる、ふけつ、ふもう、ふりょう へんなやつ 人物、へんたい、へりくつ ほらふき、ほら、ほうけい ま行 まぬけ、まけいぬ、まんぽ、まねごと、ましょう、まがいもの、ませ、ませがき、まざーこんぷれっくす、まぞ、まとはずれ、まだお、まどぎわ、ますかき、まんこ(NG)、まかり みっかぼうず、みずしょうばい 社会、みじゅく、みしょう、みごろし、みみくそ むぼう、むだ、むっつりすけべ、むえき、むさい、むめい、むりげー、むしょく 社会、むのう めくそ、めざとい、めめしい、めんくい、めざわり、めくら(NG) もんきー 動物、もう、もぐり、もらはら や行 やぼ、やくび 時間、やくちゅう、やすもの、やから、やろう、やぶいしゃ 医療、やらせ、やじ 社会、やにかす、やくたたず ゆめものがたり、ゆうがい、ゆあか、ゆうめいぜい よわい、よわき、よわむし、よすてびと、よごれ、よまいごと ら行 らしくない、らんぱつ、らんぼうもの 人物 りょな、りんしょく るーぴー、るーざー れいしすと、れっか、れいけつ、れいさい ろくでなし、ろんぱり、ろうかい、ろうがい 人物、ろりーたこんぷれっくす、ろまんちすと、ろーとる、ろうぜき、ろてい わ行 わきが 人体、わる、わるもの 人物、わるさ、わがまま、わざわい、わすぷ 機械、わすれんぼう、わいざつ、わるぢえ が行 がんこ、がき、がいじ、がんくび ぎぜんしゃ ぐしゃ、ぐのこっちょう、ぐぐれかす、ぐず、ぐさく、ぐれんたい 人物、ぐこう げろ 暴力、げせわ、げどう、げす、げば、げばひょう 社会、げてもの 食べ物 ごみむし 虫、ごみ、ごうご、ごたく、ごろ、ごろつき ざ行 ざこ、ざつ じいしきかじょう、じこちゅうしんてき、じしんかじょう、じじい、じゃま 感情、じじー、じゅくじょ、じこちゅう、じぼうじき 感情、じゃあく、じゃくしゃ ずぶ、ずうずうしい、ずぼら、ずるがしこい、ずたぼろ、ずら 服飾、ずんぐり ぜいたく、ぜいにく ぞうきんがけ、ぞんざい だ行 だら、ださく、だいこんやくしゃ、だめだし、だっちわいふ、だすと でぶ、でっぱ 人体、でくのぼう、でまかせ どぶ、どうるい、どんぶりかんじょう、どかた 人物(NG)、どがいし、どんくさい、どーぷ、どれい 人物、どっちつかず ば行 ばか、ばかやろう、ばーか、ばばあ、ばとう、ばせい、ばちがい、ばじとうふう、ばけもの、ばばぁ びっち、びんぼう、びり、びじれいく、びっこ(NG)、びんぼうがみ 宗教、びょうき ぶさいく、ぶす、ぶんけい、ぶろう、ぶざま、ぶかっこう、ぶれいもの、ぶきよう、ぶーいんぐ、ぶりっこ、ぶっきらぼう、ぶらく(NG) べんとうもち 人物 ぼけ、ぼんくら、ぼろ、ぼぼ 人体、ぼろくそ ぱ行 ぱー、ぱぱらっち、ぱあ、ぱくり、ぱいぱい ぷー、ぷーたろう、ぷあ、ぷりけつ 人体、ぷっしー、ぷりまどんな、ぷぎゃー ぺー、ぺーぺー、ぺにす 人体 ぽえむ 芸術、ぽんこつ 機械 編著:ぴょん このページの最終更新日時は2023年08月06日 (日) 19時34分54秒です コメント 名前 しりがる が抜けていました - かりうむ (2023-08-05 15 21 49) なまけもの 動物が抜けています - はるよし (2023-08-04 23 10 18) 追加しました - ゟ (2023-08-05 00 24 06) いまらちお が抜けていました - かりうむ (2023-06-26 18 05 33) 追加しました - ゟ (2023-06-26 18 08 47) 修正を反映しました。 - ゟ (2023-03-08 19 55 42) いきすぎ、いなかっぺ、いんしつ、うぐ、うちわねた、うわづみ、はなくそ 人体、はめ 暴力、ひも、やくたたず、よまいごと、ばけもの、ばばぁ、びょうき 要削除:うすのろ(2個ある)、じじい(2個ある)、ぶー(ノーマル単体) 訂正:びれいじく→びじれいく 追記・修正は行なっておりません - かりうむ (2023-03-08 19 10 43) 暴言タイプはこれで過不足がなくなったと思われます - かりうむ (2023-03-08 19 12 25) いきすぎ、うわきもの、きかんぼう、きにゅう、くずやろう、しっこ、しんで、すきっぱ、のろ、のろま、まかり、むのう、ろうぜき、ろてい、ころす(NG) 訂正:かんぶ→かんぷ、どかた 人物→どかた 人物(NG) 追記・修正は行なっておりません - かりうむ (2023-03-03 23 18 27) むしょく 社会、ゆうめいぜい、ろーとる、ぐこう、だすと、ばじとうふう、わいざつ、わるぢえ 暴言タイプでない:わいせつ 暴力単体、ださい 感情単体 複合が未記載:わるもの 人物 追記・修正は行なっておりません - かりうむ (2023-02-27 22 28 10) しばくの複合は暴力だよね - 名無しさん (2023-01-30 10 49 23) いいがかり、おおぐち、おまえ、おもなが、おーるど、すっとこどっこい、たんさいぼう、ちしょう、ちろう、ちんき、なきむし、なまいき、なんじゃく、ますかき、ずたぼろ、ずら 服飾、ずんぐり、ぶっきらぼう、ぼろくそ - かりうむ (2023-01-14 16 21 46) なまごみ - 名無しさん (2023-01-06 11 50 57) 追加しました - かりうむ (2023-01-14 16 25 04)
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ゆっくりいじめ系1969 ゆっくりした教育?の一部です。 読んでないとまったく分かりません。 青年の家から連れてこられた子れいむはまりさ達の群れに到着した。 今日は新しく自分たちの仲間となった子れいむの歓迎会だ。 大人たちががんばって大量のご馳走を用意した。 「さ、れいむ!いっぱいたべてね!」 しかし促されたれいむは一切反応しない。 「ゆ?どうしたのれいむ?」 「なにこれ?こんなごみよりはやくあまあまなごはんをよういしてね!しゅーくりーむでいいよ!」 事実そこにあるのは虫や生ごみなのだ。 しかしそれは野生のゆっくりにとってはご馳走である。 このれいむは青年によって甘やかされて育った。 最初の一週間ほどは贅沢な生活に満足していた。 しかしご飯も毎日同じものですぐに飽きたて美味しくなくなったし青年もまるで遊んでくれない。 こんな家よりもまりさおねえさんの家のほうがゆっくりできる。 子れいむの頭ではこうなっていた。 「なにいってるの!?これがごはんだよ!ほら。」 ぱくぱくとご飯を平らげていくまりさ。 「…みててきぶんがわるくなったよ。ねむりたいからべっどをよういしてね!」 「ゆ…。」 そんなれいむの反応にめげず寝床へ連れて行く。 しかしそこでもれいむはわがままに文句を言う。 「こんなところじゃねむれないよ!ちゃんとふかふかなべっどをよういしてね!」 青年の家の家では彼が用意したふかふかのベッドで眠っていた。 ただの洞窟に藁ですらない枯れ草を敷いただけのベッドでは満足できるはずも無い。 「それにむしさんのこえがうるさくてねむれないよ!ゆっくりしないではやくなんとかしてね!」 確かに虫の声はしているが野外なのだから当然だ。 しかし青年の家で暮らしていたれいむにはそれが分からない。 結局この日はれいむのわがままを聞いているだけで終わった。 ちなみにれいむは眠れない眠れないと言いながら日が落ちると勝手に寝ていた。 翌日朝早く大人たちが狩の準備をしていた。 「ゆっくりおはよう!」 あのれいむが目を覚ました。 大人子供問わず渋い顔をするものが多い。 このれいむの昨日の有様を見ているのだから当然だ。 「れいむはたいくつだよ!あそびたいからおもちゃもってきてね!それとおなかすいたからあまあまもってきてね!」 「ごはんはちょっとまってね、おもちゃはないけどそとのみんなとあそんでね。」 まりさがれいむに根気強くそう諭す。 しかしれいむはそんな言葉に一切耳を傾けようとしない。 青年の家では少なくとも相手に聞こえた願いはすべて叶えて貰えたのだ。 「おもちゃもないの?ばかなの?しぬの?あんなきたないゆっくりたちとあそんでたのしくないよ!」 大人たちの中には目に見えてイライラしている者も多い。 わずか一晩でこのれいむは群れの大人すべてを敵に回していた。 何とかれいむをなだめすかし狩に出かけたがその間にれいむは自分より小さいゆっくり達をおもちゃにして遊んでいる所を大人に止められた。 それを注意されても。 「おもちゃをもってこないまりさたちがわるいいんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 と言って取り合わない。 食事の時間になっても、 「まずいけどおなかすいたからしょうがなくたべるよ!むーしゅ!むーしゃ!げろまず!」 そんなことを言いながら大人三匹分はご飯を食べた。 睡眠時間でも、 「やっぱりむしさんがうるさいよ!まりさはむのうだね!さっさとなんとかしてね!」 そんなわがままばかり言うれいむに群れのゆっくり達は完全にあきれ返っていた。 そしてついに数日後、 「こんなところじゃゆっくりできないよ!おかあさんのところのほうがゆっくりできたよ!」 ついにれいむも我慢の限界を迎えた。 何を我慢したのかと思うかもしれないがれいむにとっては我慢の連続だったのだ。 ついには青年の家のほうがよかったと言い出す始末。 それは事実なのだが勝負に勝ったと思っている群れの者たちにとっては禁句だった。 「いいかげんにしてね、れいむ!そんなにおにいさんのところがいいならおにいさんのところにかえってね!」 まりさがもっともなことを言う。 周りのゆっくり達もいい加減このれいむに付き合うのは限界を迎えていたため口を差し込む者は少しもいない。 「それじゃあれいむたちはおかあさんのところへかえるよ!むのうなまりさたちはゆっくりしね!」 一瞬ほっとしたがまりさだが違和感に気づく。 れいむ…達? 「まりしゃもれいみゅのおきゃーしゃんのときょろへいきゅよ!」 「れいむもだよ!れいむおねえさんのいうとおりここじゃゆっくりできないよ!」 「ありしゅもだよ!」 子供達の一部が口々にそう言い始めたのだ。 教育前の赤ゆっくりや、あまり教育に身を入れていないプチゲス達が大半だ。 実はれいむは同年代か年下のゆっくり達を集めていかに青年の家がすばらしかったかを話したのだ。 「「「「「「「「どおじでぞんなごどいうのおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」 そんなことを知らない大人たちは悲しみにくれる。 あれほど自分達が苦労して人間達から救ったのに。 しかしそんな彼女達にかけられるのは冷たい言葉だ。 「まりさたちがにんげんさんよりゆっくりさせてくれるっていうからここにきたんだよ!にんげんさんのほうがゆっくりさせてくれるなんて!まりさのうそつき!」 「ありしゅのしぇいでゆっきゅりできにゃいよ!」 「れいむのせいでおかあさんからはなれたんだよ!もんくあるならもっとゆっくりさせてね!」 この子ゆっくり、赤ゆっくり達も人間に飼われそうになっていた所をれいむと同じような台詞でここにつれてこられた者たちだ。 「ゆっくりさせてくれるから」という理由できたためそれ以上にゆっくりできる場所があるならばここにとどまる理由は無い。 そして大人たちが止めるにもかかわらず子ゆっくり達は半数近くが人里へ降りていってしまった。 あの後れいむの主張に感化されてしまったかなりの数の子ゆっくりが彼女達に合流したためだ。 「ゆううううう…。」 これまでの苦労を思い泣くまりさ。 いったいこれまでの自分達の苦労は何だったのだろうか? 「なかないでまりさ。せめてにんげんさんとゆっくりできるようにいのりましょう。」 そうありすが慰めてくれるが野良のゆっくりがそうそう良い人間に飼われることなど無いことをまりさは知っている。 仮に良い飼い主に出会えたとしても、どれだけいい子にしていても、突然理不尽な理由で捨てられてしまうこともある。 なにせ自分達がそうだったのだから。 まりさ達は悲嘆にくれているがこの事件はゲス予備軍を淘汰できた意味でこの群れにとっては利益をもたらしていた。 しかし「人間よりもゆっくりと一緒の方がゆっくりできる」という群れのアイデンティティーをも破壊してしまった。 彼女達は悲しみながらもこれからも活動を続けていくだろう。 しかしこれまで通りの活動ができるはずは無かった。 「おかあさんのところへいったらあまあまいっぱいたべようね!」 「ありしゅはときゃいはだきゃらきっとにんげんしゃんもやさしくしちぇくりぇるわ!」 「まりさはれいむがいっていたおもちゃがほしいよ!」 もはや寝言の領域に入った子ゆっくり達の妄想は止まらない。 飼い主に捨てられたという境遇こそ大人達と同じものの彼女達は致命的に大人たちとは違う所があった。 れいむ以外は直接人間に会ったことがないのだ。 会ったことがある子ゆっくりは群れに残った。 れいむも知っているのは青年のみ、それもその一面のみである。 ゆえに彼女達が人間に対して大人ほど恐怖を感じないのは必然だった。 無知―――それは霊長たる生物意外が許されるものでは無い。 「なんだぁ?ちびなゆっくりがうじゃうじゃと。」 子ゆっくり達の集団を最初に発見したのは大人達の群れ住んでいる山の持ち主の男だ。 ゆっくりが住み着いていたのは知っていた。 しかし彼女たちの主張を盗み聞きしある種の感動を覚えた男は山にゆっくり達が住み着くことを黙認したのだった。 「ゆ!にんげんさん!れいむにあまあまもってきてね!それとおかあさんのとこへつれてかえってね!」 「ゆっきゅりしにゃいではきゅしちぇね!」 「おもちゃがほしいよ!もってきてね!」 ゆーゆーと男に要求する子ゆっくり達。 教育した大人たちが見たらたいそう嘆くだろう。 赤ゆっくりだけでなく子ゆっくり達まで馬鹿なことを言う。 男はため息をつく。 山から下りてきたように見えたからあの群れの連中かとも思ったがどうやら違うようだ。 群れの子ゆっくりとは何度か会ったことがあるがもっと素直でかわいかった。 実際は教育がすんでいない子ゆっくりは山から出されないため男は群れのゆっくりはいい子ばかりと勘違いをしていた。 「おまえら、少しそこで待ってろ。望みのものは用意してやる。」 「はやくしてね!れいむはおなかすいてるんだよ!」 他の子ゆっくり達も口々に遅い遅いと文句を言う れいむに影響されてこの集団の子ゆっくりたちは早くもゲス化が始まっていた。 「さてと、加工所加工所っと。」 男は携帯電話で加工所への連絡を入れた。 「たすけてれいむ、わふ!!!」 「ありしゅはときゃいはなのよ!ていちょうにあちゅかいなしゃぶふっ!!!!」 「どおじでだずげでぐれげぶ!!!」 次々と加工所の職員に捕らえられていく子ゆっくり達。 「どおじでごんなごどずるのおおおおおおお!!!!!」 一匹の子ゆっくりが叫ぶ。 加工所職員はいつものことなので無視して淡々と作業をするのみ。 代わりに男が説明する。 「彼らは加工所の職員だからだよ。」 「ゆ!かこうじょはゆっくりできないよっておふっ!」 どうやら加工所を知っているらしい野良のネットワークも侮れないものだと男が思っているとあっという間に残りは子れいむ一匹になっていた。 「こいつがリーダー格みたいだな。」 「子ゆっくりや赤ゆっくりばかりなのは珍しいな、親だけ殺されたりしたのかな?」 さすがにこのような事例は加工所の歴史でもかなり少ない。 「はなじでえええええええ!!!!!!れいむおかーさんのところにかえるうううううう!!!!」 「あー、はいはい。」 れいむが青年の言いつけ通りおにいさんと叫んでいれば状況は変わったかもしれない。 しかしそれはすべて後の祭りである。 彼女達は加工所でその短い生涯を終えるだろう。 ぱちゅりーに赤っ恥をかかせて以降、無知だの何だのと言うことは無くなった。 文字を少し教えてやり子供用の平仮名ばかりの本を与えるとうれしそうに読んでいる。 ちなみに俺が三日でいいと言ったのはその間にぱちゅりーを口説き落とす自信があったからだ。 今思うととんでもない自惚れである、我ながらおお愚か愚か。 まりさが温情で一週間にしてくれなかったらぱちゅりーとはお別れだっただろう。 で、一週間ほどして約束の半月の日にいつもの場所へ行ったのだがあいつらは結局来なかった。 れいむは別にどうでもいいのだがあいつを放り込まれた群れがどうなったのかは少し興味があったのだが。 それっきりれいむのことは忘れてしまった。 夜、子ゆっくりばかりの群れが現れたなんていうニュースを聞いても俺にはまったく関係の無い事だった。 修正してアップロードし直そうかと思いましたがストレスがマッハなので別作品にしました。 過去書いたもの 奇跡のゆっくりプレイス 醜い男 生きるための選択 体つきゆっくり愛好家 ありすの戦い 黒歴史 ぱちゅりーの教育 ゆっくりした教育 byデストラクション小杉
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その4より 「さてと、今日は誰が虐待されるのかな?」 三匹の虐待から一匹のみの虐待に変わってから、すでに十日が経過した。 男が壁越しに恒例のセリフを吐いてくる。 それに対し、こちらのセリフも、この十日間変わることはなかった。 「ゆゆっ!! まりさをゆっくりつれていってね!!」 「……またお前か。いい加減、お前を痛めつけるのは飽きてきたんだがね」 「おにいさん、やくそくはやぶらないでね!! まいにちおなじでもいいって、まえにいったよ!!」 「わーってるよ、全くお前も強情だな」 そう言って、男の足跡は遠ざかって行った。 れいむは、黙ってまりさと男のやり取りを聞きながら、やり過ごした。 ありすも男が去るまで、無言を貫いている。 「ゆふぅ……」 足音が聞こえなくなって、れいむはホッと息をもらす。 男がいつ発言を翻して、再び全員を虐待するといってこないとも限らない。 足音が聞こえなくなるまで、一切の気は抜けない。 これもこの十日間変わらぬ光景だった。 この十日間、れいむとありすは、一度も男の虐待を受けていなかった。 それもそのはず、すべての虐待をまりさ一匹が被ってくれていたのである。 まりさは男が発言を撤回しても構わないといったにも関わらず、頑なにそれを拒み、自分を虐待しろと繰り返した。 結果、れいむは男にここに連れて来られて以来、久しく味わっていなかったゆっくりとした時間を満喫することが出来た……はずだった。 そう、出来たはずだったのだ。 部屋から出られないことを除けば、美味しいご飯に温かい毛布、そして隣には大好きなまりさと親友のありす。 好きな時に起きて、好きな時に好きなだけご飯を食べて、好きな時に眠るれる日々。 実にゆっくりした生活である。 しかし、れいむはこの十日間、本当の意味で“ゆっくり”した時間を過ごすことは、一度として出来なかった。 肉体的には、確かにゆっくり出来ただろう。 男から受け続けた虐待の傷も、すっかり癒えた。 寧ろ、森で暮らしていたころより丈夫になったくらいだ。ドッグフードとは言え、栄養バランスが良いおかげだろう。 しかし、精神面ではゆっくりとは到底いかなかった。 どんなにゆっくりしようとしても、圧し掛かってくるのは、まりさへの負い目と自己嫌悪。 更には、いつか男が元の虐待スタイルに戻すのではという恐怖心。 これらがれいむの心を乱してしまう。 ゆっくりは、心身ともにゆっくり出来ていて初めて“ゆっくり”した状態と言える。 如何に身体がゆっくり出来ていようと、心がゆっくり出来なければ、それはゆっくりしているとは言えないのである。 と言っても、贅沢をいう訳にはいかない。 れいむ以上に苦しいのはまりさなのだ。 まりさは、れいむとありすの苦痛を一身に背負っていてくれるのだ。 まりさは毎日れいむとありすに「ゆっくりしていってね!!」と声をかけてくれる。 心の底から、二匹にゆっくりして欲しいのだろう。 ゆっくり出来ていないなんて、死んでも口に出せるはずはなかった。 そんな時である。 壁越しにありすが声をかけてきた。 「ねえ、れいむ……いまいいかしら?」 「ゆっ? うん、いいよ!!」 そう言えば、ありすと二匹だけで話をすることも、最近はめっきりと減ってしまった。 まりさが男に連れていかれてから一時間の間は色々と考え込んでしまい、どうしても話をする気分じゃなくなってしまうのだ。 だからと言って、まりさが部屋に戻って来ても、あまり話はしない。 部屋に戻るや、まりさは疲れと痛みからすぐに寝てしまうので、れいむとありすの話し声で起こすわけにはいかないからだ。 結果、まりさが起きた後、ホンの少しの時間、三匹で話をするのがここ数日の日課となっており、それにしたって負い目を感じずにはいられないものであった。 二匹だけで話をするのは、本当に久しぶりである。 「ねえ、れいむ!! あなた、いまゆっくりできてる?」 「ゆゆっ!?」 ありすが何でそんな質問をしているのか、すぐには理解できなかった。 しかし、頭の中で言葉を反芻し、ゆっくりと考えてみると、ありすが何を言いたいのか、何となく理解できてきた。 「……ゆっくりできてるよ。まりさのおかげで……」 「そう……」 「ありすはゆっくりできていないの?」 「……もちろんゆっくりしているわ。まりさががんばってくれているんだもの!!」 ゆっくり出来ていると、ありすの弁。 しかし、言葉の中に隠れているありすの本音は、間違いなくれいむと同じものであった。 結局のところ、ありすもれいむ同様、まりさに負い目を感じ、ゆっくり出来ていないのだ。 「れいむ……ありすたち、このままでいいのかしら?」 「ゆっ? このままって?」 「いつまでもまりさにたよりきって、くらしつづけていることよ」 「ゆぅぅ……」 「まりさは、ありすやれいむのためにまいにちぼろぼろになっているのに、ありすたちはまりさになんにもしてあげられない」 「ゆぅ……」 「ねえ、れいむ!! ほんとうにこのままでいいのかしら?」 「……いいわけないよ。いいはずがないよ!! でも!! でもっ!!!」 れいむだってありすに言われるまでもなく分かっている。 このままでいい筈がないのだ。 まりさは、れいむとありすのために、毎日地獄のような虐待をされ続けている。 すべてはれいむとありすをゆっくりさせるために。 だというのに、肝心の二匹が、まりさを気にしてゆっくり出来ていないというのだから、本末転倒もいいところである。 でも…… 「でも……れいむ……いじめられたくないよ……」 「んん……」 そう、結局はここに行きついてしまうのだ。 しかも、れいむは男からの虐待を受けなくなって、もう十日もたっている。 これが以前の様に、毎日虐待されていた時なら、たまには自分がされるのも有かもしれなかった。 自分たちではなく男が虐待する者を選んでくれていたら、最初から諦めがついて、却ってよかったかもしれなかった。 しかし、平穏な日常に慣れたれいむは、以前にも増して、一層虐待への恐怖が強くなっている。 もう二度と虐待はされたくない。何に変えても!! 何をおいても!! 偽らざるれいむの本音であった。 こんなことなら最初からサイクル回しで虐待をされるんだった。 れいむは、最近ちょくちょくそう考えるようになっていた。 それなら全員が虐待を受け、誰一人負い目を持つこともなかった。 それ以前は毎日虐待されていたのだ。虐待が無くなる訳ではないが、三日に一回ならあの時のれいむなら十分満足できただろう。 考えてみたら、あの毎日虐待されていた時は、虐待自体は辛く苦しかったけど、三匹で過ごす一時はとてもゆっくり出来ていた。 実に充実していた。全員の心は一つだった。 しかし、どんなに過去を振り返ろうが、時間は戻らない。 結局、れいむはどんなにまりさを心配しても、何一つしてやることは出来ないのだ。 「……ねえ、れいむ……まりさって、すてきよね!!」 「ゆっ!?」 突然、何の話をしたいのか、ありすがそんなことを言ってきた。 「はじめてあったときから、すごくきれいゆっくりだっておもってたけど、そのうえあたまもよくて、やさしくて、ゆうきがあって、そして、すごくゆっくりしていて……とってもとかいはよね!!」 「ありす……いったいどうしたの?」 「れいむ!!」 「ゆっ!?」 「ありすは!! ありすは、まりさがすき!!!」 「!!!!」 「まりさがすきなの!!!」 ありすは、れいむに向かって、いきなり爆弾発言をしてきた。 れいむには、突然そんなことを言ってくるありすの意図が掴めなかった。 好きと言っても、いろいろある。 家族に対し、友人に対し、恋人に対し。 ありすがまりさの家族でない以上、友人か恋人かのどちらかであろう。 しかし、友人の場合、れいむに対しても好きと言っていい筈である。 親友という自負がある。れいむの独り善がりではない筈である。 しかし、それがなかったということは、つまるところ…… 「それって、『あいしてる』ってこと?」 「……ゆぅ!!」 ありすは少し躊躇いながらも、しっかりと返事を返してきた。 「……ありすはね、ずっとまりさのことがすきだったの!! でも、まりさってすてきなゆっくりでしょ!! ありすじゃまりさにはあわないとおもって、ずっといわなかったの……」 「……なんでれいむにそんなこというの?」 「もうこれいじょう、まりさにつらいおもいをしてほしくないから……とかいはのけついひょうめいよ!!」 「けつい……ひょうめい?」 ありすが何を言っているのか、さっぱりれいむには理解できなかった。 深く聞こうとしても、「つかれたから、ゆっくりねるわ」と会話を切り上げ、教えてくれなかった。 仕方なく、れいむも毛布に包まり、目を瞑り、ありすの言葉の意味を考え始めた。 “まりさがすきなの” 意味は分かる。 ありすはまりさを愛しているのだ。 つまるところ、れいむと同じということである。 しかし、なぜここにきてそんなことを言ってくるのだろう? なぜ自分にそんなことを言ってきたのだろう? 決意表明とは、いったい何を指して言っているのだろう? どれだけ考えようと、その意味がれいむには分からなかった。 ただ一つ言えることは、ありすはれいむのライバルということである。 れいむもずっとまりさが好きだった。愛していた。 ありすは親友だけど、まりさのことを譲りたくはない。 れいむはその日悶悶としながら、一日中、これまで以上にゆっくり出来ない時間を過ごした。 後日、れいむはありすの言葉の意味を知ることとなる。 「さ〜てと、今日も楽しい楽しい虐待の時間が始まるわけだが……また、今日もまりさか?」 男は気だるそうに、壁越しに言葉をかけてくる。 そんなに面倒くさそうにするなら、すぐさま虐待なんて止めて、れいむたちを森に帰せと言ってやりたい。 怖いので本当に言うつもりはないけど…… 対して、いつも通り、まりさが男に返事を返す。 「ゆっ!! そうだよ!! ゆっくりまりさをつれていってね!!」 全くもって代り映えのない会話である。 男は、これまた気だるそうに「わーったよ……」と返事をして、まりさを連れていこうとする……が、今日はいつもとは違う事態が起きた。 新たな声が乱入してきたのである。 「おにいさん!! ちょっとまってね!!」 ありすだ。 いつもはれいむ同様、男が去るまで口を開くことのない彼女が、行き成りまりさと男の間に割って入ってきたのである。 「おにいさん!! きょうはとかいはのありすが、ぎゃくたいされてあげるわ!! せいぜいかんしゃするのね!!」 「「ゆゆっ!!!」」 「ほう!!」 れいむとまりさの驚愕の声がハモる。 その後、男も久しぶりにおきた変化に、嬉しそうに声をもらす。 「あ、ありす!! いったいなにいってるの!! まりさがぎゃくたいされるんだよ!! ゆっくりじょうだんはやめてね!!」 「まりさ!! いつもまりさはがんばってくれているから、きょうはありすがかわりにぎゃくたいされてあげるわ!! きょうはおへやでゆっくりしていってね!!」 「ありす!! まりさなら、ぜんぜんへいきだよ!! ありすがいじめられることないよ!!」 「でも、もうきめたのよ!! とかいはににごんはないわ!!」 「ゆぅぅ……おにいさん!! おにいさんからもいってあげてよ!! まりさがぎゃくたいされるんだから、ゆっくりりかいしてねって!!」 自分の説得では、どうにも出来ないと悟ったのか、まりさは男に協力を呼びかける。 しかし、毎日まりさばかりで飽きていた男だ。 まりさの言い分を聞くはずもなく…… 「いいだろう、ありす。今日はお前を虐待してやるよ!!」 「なんでええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――!!!!」 まりさの悲鳴を無視し、男はありすに言葉をかける。 「お前にもまりさの酔狂が乗り移ったのか? せっかくまりさが犠牲になることで、ゆっくり出来る日々を送れているってのに。それを自分から壊すなんてな」 「なんとでもいいなさい!! こんなにせもののゆっくりなんて、まっぴらごめんよ!!」 「ふん、なかなか言うじゃないか。その根性が今後も続けばいいがな」 ありすと男の会話と共に、男の足音が次第に小さくなっていく。そして完全に聞こえなくなった。 「ゆうううううぅぅぅ……なんでありすをつれていっちゃうのおおおおおおおぉぉぉぉ――――――!!!!」 まりさは未だに未練たらしく、声を荒げている。 ありすが代わってくれたことで、虐待されずに過ごせるというのに、本当にすごい根性である。 事情を知らなければ、うっかりゆっくりてんこと勘違いしてしまうほどだ。 よほどれいむとありすに傷ついてほしくないのだろう。 或いは、自分が誰のために虐待されているのか分かっているのかという、怒りも含んでいるのかもしれない。 未だ叫んでいるまりさを余所に、れいむは昨日のことを考えていた。 ようやく昨日のありすの言葉の意味が理解できた。 これがありすの言っていた「決意表明」なのだろう。 ありすは、ずっと悩んでいた。 このままでいいのかと。まりさに頼り切ったままでいいのかと。 大好きなまりさの為に何かしてあげたい。まりさの力になりたい。 ここまでは、れいむも常々思っていたことである。ありすとなんら変わらない。 しかし、れいむと違い、ありすは止まっていた足を再び前に出した。 自分が虐待されることによって、まりさの苦労を取り払いたい。 まりさをゆっくりさせてあげたい。 まりさと対等でありたい。 その気持ちが、臆病だったありすを突き動かしたのであろう。 れいむはここに来て以来、心に二度目の衝撃を受けた。 一度目は言うまでもなく、十日前のまりさの言葉である。 れいむは、ありすの行動力に対して、驚嘆と感謝と……嫉妬を感じた。 ありすが虐待されることによって、まりさは今日一日ゆっくりすることが出来るだろう。 例えありすのことを気にして精神的にゆっくりできなくても、一日虐待を受けないだけで肉体疲労度は全然違う。 まりさがゆっくり出来る。その機会を作ってくれたありすに、れいむは大いに感謝した。 それと同時に、れいむは羨ましかった。ありすの行動力が。 れいむと同じく臆病だったあのありすが、こんな大胆な行動を起こしてくるとは思わなかった。 こんな勇気を持っているとは思わなかった。それが羨ましくて仕方がなかった。 れいむは悔しかった。まりさに対する想いで負けてしまったことが。 昨日のありすの発言を聞いても、自分の方がまりさを想っている、まりさについて考えているという自信があった。 しかし、それもありすの行動で打ち砕かれた。 結局、想いだけだったのだ。口だけだったのだ。 れいむには、ありすの勇気を見せつけられても、それじゃあ自分もという気には到底なれそうになかった。 どうしても恐怖で身が竦んでしまう。虐待を受けたくない。ありすに続くことなんて、到底出来ない。 れいむは焦った。まりさとありすが近付いてしまうことに。 これでありすは、まりさに遠慮する必要が無くなった。まりさに負い目を感じることが無くなるのだ。 スタートラインは同じだったのに、たった一つの行動で、ありすはれいむの遥か先へと行ってしまったのだ。 しかし、何より腹が立つのは、そんなことを考えてしまう自分自身であった。 まりさやありすのように行動もせず、ただその恩恵を甘受している身でありながら、頭に浮かぶことは常に自分のことばかり。 口だけの自分に……何も出来ない自分に……れいむは腹が立って仕方がなかった。 「なんでじぶんからいじめられにいくのおおおおおぉぉぉぉ―――――――――!!!!」 部屋に戻ってきたありすに真っ先にまりさが掛けた言葉であった。 「ゆぅ……まりさ…………あん……まりおおきな……こえを…あげないで……………あたまに……ひびく…わ……」 「ゆっ!! ご、ごめん!! ありす!!」 ありすは、いつものまりさ以上に荒い息を吐いている。 久しぶりにまりさ以外を虐待した男がつい加減を間違えてしまったのか、それとも久しぶりに虐待を受けたありすの体が付いてこなかったのか。 とにかく、ありすが相当苦しそうなことには違いなかった。 しかし、まりさはありすに文句を言うのを止めなかった。 虐待を代わりに受けてくれて文句というのも可笑しな話であるが、ありすの体に差し障りない程度の音量で、ありすを攻め立てる。 「でもね、ありす!! ありすがいじめられることはなかったんだよ!! まりさがいじめられれば、ありすたちはゆっくりできるんだよ!! なんでこんなことしたの!?」 「まりさ……まりさはまえに……いったわよね……だいすきなひとは……じぶんをぎせいにしても…まもらなければならな……いって……」 「そうだよ!! だから、まりさがぎゃくたいをうけるんだよ!! ありすとれいむのために!!」 「ありすも……そう………おもうの」 「ゆっ!?」 「ありすも……だいすきだから……まりさと………れいむが…………きずついてほしくないから……ゆっくりして………ほしいから」 「ゆうぅ……でも!! でもありすはとってもくるしそうだよ!!」 「それは……いつものまりさも………おんなじでしょ……」 「そうだけど、まりさはおねえさんだから……」 「ありす…だって……とかいはよ……しんのとかいはとは……こういうことが……できる…ゆっくりのことを……いうのよ」 「でも!! まりさは、やっぱりいやだよ、ありすがきずつくのは!! あしたはまりさがぎゃくたいされるからね!!」 「だめよ……あしたも………ありすがいくわ!!」 「なんでぞんなごどいうのおおぉぉぉぉぉ――――――!!!!」 「いったでしょ……それが………とかいはと……いうもの…だから……よ」 まりさは何とかありすを翻意させようとしたが、ありすは一向に考えを改めてくれなかった。 その後、ありすの「つかれたわ」という言葉で、二匹の会話は一時幕引きとなった。 さすがにまりさも、傷付いたありすを無理させてしまっては、本末転倒であることを悟ったのだろう。その場は引いてくれた。 しかし、ありすが翌日起き上がると、再びまりさはありすに対し止めろと説得を繰り返す。 それに対し、ある程度回復したありすも一歩も引かなかった。 二匹は男の虐待が始まるまで、延々と話し合い続けた。 その日、れいむは一言も口を挟めなかった。 「それで、今日はまりさとありす、どちらが虐待されるんだ?」 定番の男の言葉である。 それに対し、ありすが口を開いた。 「ゆっ!! きょうは、とかいはのありすがぎゃくたいされるばんよ!! ゆっくりつれていってね!!」 「へいへい」 そう言って、ありすを連れていく男。 そんなありすに対し、まりさは壁越しにありすに言葉をかける。 「ありす!! ゆっくりがんばってね!!」 「だいじょうぶよ!! とかいはをあまくみるものじゃないわ!! まりさこそ、ゆっくりまっていてね!!」 「ゆっ!! ゆっくりまってるよ!!」 まるで仕事に赴く夫と、それを見送る嫁のような会話である。 最近、まりさとありすはいつもこんな感じであった。 ありすが初めて虐待されてから二週間が経過した。 あの日以来、ありすとまりさは交互に虐待される日々を送っている。 まりさは当初、なんとしてもありすの気持ちを変えさせようと躍起になっていた。 自分が虐待される。ありすは虐待されることはないのだ。すべて自分に任せればいい。 まりさはこれを繰り返した。 対してありすも、意地を通し続けた。 これからはありすが虐待される。まりさは休んでいなさい。これが都会派の役割よ。 二匹の意見は、なかなか折り合いがつかなかった。 数日後、先に降りたのはまりさだった。 どんなに説明してもありすは聞いてくれない。まりさはそういう考えに落ち着いたのだろう。 そこで普通のお馬鹿なゆっくりなら、あまりの強情さに敵対に発展することだろう。 自分の主張が通らないことは、ゆっくりにとって耐えられないことだからである。 「なんでまりさのいうことをきいてくれないの? ばかなの? しぬの? まりさのいうことをきかないありすはゆっくりしね!!」 こうなるのが目に浮かぶようだ。 しかし、このまりさは頭が良かった。 何でありすは自分の言うことを聞いてくれないのと憤るのではなく、ありすの心意気をしっかりと受け取ってくれたのだ。 理解したのだ。ありすが本当に自分のことを考えてくれているのだと。 自分に感謝してくれているからこそ、まりさの代わりを務めているのだと。 まりさはその心意気に報いることにしたのである。 その日から、まりさとありすは急激に接近していった。 毎日、変わりばんこで虐待を受けることを決め、互いで負担を減らすことにした。 虐待されていない方は、お互いのことは気にせず徹底的に体を休めることに努める。 受けた虐待を、次に持ち越さないためである。 以前は負い目があってゆっくり出来ていなかったありすも、今では負い目もなく、虐待のない日は心身ともにゆっくりと過ごしているようだ。 まりさも同様である。 また、少ない会話時間は、まりさとありすの二匹が中心となっていった。 会話の種は、主に男の虐待についてである。 二匹の話によると、最近男は昔三匹が受けた虐待を繰り返しているらしい。 虐待のバリエーションが尽きてきたのだろうか? しかし、そんなことはこちらには関係ない。というか、寧ろ好都合であった。 一度受けたということは、対策を立てられるということなのである。 そのため、まりさとありすは、毎日のように虐待対策を話し合った。 これこれこうすれば、あまり痛くないんじゃないかな? 明日はきっとこの虐待をしてくるわよ!! そろそろ“はこ”を使ってくると思うよ!! 今日この虐待をしてきたわ!! 読み間違えたわね!! ゆゆっ!! あの虐待は、こうするとあんまり痛くなかったよ!! そこにれいむの入る隙間はなかった。 二匹の中が急接近したこともあって、微妙に除け者にされていると感じ、なかなか入って行けなかったのだ。 それに話は虐待関係についての事ばかり。 虐待を受けていないれいむには、心情的に入り辛い話だ。 それでも寂しくてなんとか会話に参加したこともある。 まりさもありすも、れいむを決して仲間外れにしたりはしない。 しかし、いつの間にかれいむ一匹が、置いてけぼりにされてしまうのだ。 二匹も悪気があってしているわけではないのだろう。 実際、れいむにも話を振ってくれている。 しかし、虐待関係の話を振られても、れいむには応えられることは限られているし、れいむも熱心に話している二匹に、水を差すことは出来ない。 れいむと違い、二匹には命の危険性があるのだ。我儘で話を変えるなんてことが出来るはずがない。 結果、れいむがいつのまにか零れ落ちてしまうのである。 れいむは焦っていた。 最初はありすとまりさが急接近してしまうことにだけ目が向いていた。 しかし、今ではもっと重大な局面に差し掛かっている。 れいむの存在そのものが揺らいでいるのだ。存在が希薄になっているのだ。 まりさとありすが接近すれば接近するほど、れいむの居場所がなくなってくるのだ。 しかし、れいむには分かっていた。自分の居場所を取り戻す方法を。 簡単である。 れいむも虐待されればいいのだ。 虐待されれば、れいむも二匹に負い目を感じる必要はなくなるのだ。 二匹と共にゆっくり会話に興じれるのだ。 居場所を取り戻すことが出来るのだ。 しかし、どんなに頭では分かっていても、やはりれいむには言えなかった。 一言男の前で「きょうはれいむをぎゃくたいしてね!!」と叫べばいいだけである。 先日、男は「そろそろれいむを虐待したいなあ」なんて言葉を口にしていた。 れいむが言えば、どんなにまりさとありすが反対しようと、男はれいむを虐待してくれるだろう。 存分に可愛がってくれるだろう。 それでも……れいむには言えなかった。 虐待は怖い これがれいむの心を、体を縛っている。 今の状況はれいむにとって、辛く苦しかった。居場所のない自分が悲しかった。なんとしても変えたかった。 しかし、そのために虐待を受けるということが、どうしても出来ないのだ。 平穏に慣れすぎたれいむにとって、男の虐待はすでに死よりも恐ろしいものとなってしまっていたのである。 そんなれいむに転機が訪れたのは、その少し後であった。 れいむが虐待を受けなくなってちょうど一月が経過したころ、ありすがあることを口にした。 いや、ようやく口にしたと言うべきだろうか? その日はありすが虐待される日であった。 いつも通り連れて行かれ、一時間が過ぎると部屋に戻された。 まりさがそんなありすに声をかける。対してありすも大丈夫だと、まりさとれいむを安心させる。これもいつも通りの様子である。 しかし、本来ならこの後ありすは体を回復させるために休息に入るのだが、その日ありすは中々寝ようとしなかった。 まりさが言葉をかけても、壁越しにモジモジしているのが、何となく感じられた。 それはしばらくの間続いた。 そして、ありすはようやく意を決意したのか、ありすが「まりさ!!!」とひと際大きな声で呼びかけた。 「ゆっ!! どうしたの、ありす!!」 疲れているというのに突然大声を出してくるありすに、驚くまりさ。 「まりさ!! まりさにきいてほしいことがあるの!!」 「ゆっ? な〜に、きいてほしいことって?」 「あ、ありすと!! ありすといつまでもゆっくり…………」 そこでありすの言葉はピタリと止まってしまった。 まりさはしばらく待ち続けたが、いつまでもありすが続けてこないので、不審に思ったのか、聞き返してきた。 「ありす? どうしたの、きゅうに?」 「……」 「ありす?」 「……」 「ありすってば!!」 「……まりさ、ごめんね!! やっぱりいまのことばはゆっくりわすれてちょうだい!!」 「ゆゆっ!! どういうこと、ありす!! なにをいおうとしたの? ゆっくりおしえてよ、ありす!!」 「やっぱりいまはいうときじゃないから、ゆっくりやめておくわ!!」 「ゆぅぅ……そんなこといわないでゆっくりせつめいしてよ!!」 「もっとゆうきがでたら、そのときいまのことばのつづきをいうわ!!」 「ゆうき?」 「ごめんなさいね、まりさ!! ぜんぜんとかいはらしくなかったわ!! いつかぜったいいうから!! ぜったい!! ぜったいっ!!」 「ゆぅぅ……ぜったいだよ!! やくそくしたからね!! よくわからないけど、いつかゆっくりせつめいしてね!!」 「ええ、ぜったいにいうわ!! ゆっくりやくそくよ!!」 そう言って、ありすは寝てしまった。 ありすが言おうとした言葉。 まりさには最後まで分からなかったようだが、れいむにははっきり理解できた。 “ありすといつまでもゆっくりしていってね!!” これがありすが言おうとしていた言葉であろう。 ゆっくりしていってねと言っているが、言葉通りの意味ではない。 これはゆっくり社会で俗に言うプロポーズの言葉である。 ありすはまりさに告白をしようとして、結局途中で怖くなって言いそびれてしまったのだろう。 同じゆっくりを愛している者同士の勘だろうか? れいむには痛いほど気持ちが理解できた。 理解できた反面、れいむの焦りは頂点に達した。 まりさとありすが結婚する。 それは今以上にれいむの居場所を無くしてしまうことになってしまうからだ。 無論、ありすがしっかりプロポーズしたとしても、それをまりさが受けるとは限らない。 れいむの杞憂に終わるかもしれない。 しかし、追い詰められたれいむには、最早その可能性だけで充分であった。 なんとしてもまりさとありすの結婚を阻止しなければならなかった。自分の居場所を守るために。 そのためにはどうすればいいか? まず真っ先に思いつくのが、ありすにプロポーズの言葉を言わせないことである。 言わせなければまりさが受けることもあり得ない。 しかし、どうすればありすに言わせないようにすることが出来るのかが、れいむには思いつかなかった。 ありすに告白するなと言っても、聞きはしないだろう。 逆に、なぜそんなことを聞くのかを問い詰められ、れいむの思慕をありすに知られる恐れがある。 そうなれば、ありすはれいむに負けじと早々にプロポーズをしてしまうかも知れない。本末転倒である。 絶対ありすに、れいむの気持ちを知られることがあってはならない。 ならば、ありすの評判を下げるのはどうだろう? ありすが虐待されている間や、寝ている間を見計らって、まりさにありすのあることないことを焚きつけて、ありすの評価を下落させる。 ……却下。問題外である。 まりさは馬鹿ではない。そんなことをしても、決して信じることはないだろう。 逆にそんな嘘を付いてくるれいむの評価を落とすことになりかねない。 唯でさえ存在が薄くなっているのに、まりさに見捨てられてしまったら、れいむにはこの先生きている意味すら持てなくなってしまう。 それにこの案は、そもそもれいむ自身も気に入らない。 ハッキリ言って、れいむのやろうとしていることは、ありすに対する裏切りに近い行為である。 しかし、それでいてなお、れいむはありすとの友情を捨てきれていなかった。 調子のいいこととは理解しつつも、ありすと親友でいたかった。 ありすの悪口を陰口するなどしたくはなかったのだ。 ならば、最後はこれしか考えられない。 れいむは自分がまりさを好きなことを、ありすに教えていない。これはある意味アドバンテージだ。 更に言えば、ありすはれいむよりまりさに近い位置にいる。れいむに危機意識の欠片すら抱いていないだろう。 だから…… ありすがプロポーズする前に、れいむがまりさにプロポーズをする!!! ありすのあの調子からするに、明日明後日にでも、すぐにプロポーズしてくることはないだろう。 ならば、先にれいむがまりさに告白し、まりさが受けてくれれば安泰どころか、愛するまりさと一緒になれて、一石二鳥にも三鳥にもなりえるのだ。 無論、ありすより先に告白したとしても、まりさがれいむのプロポーズに答えてくれるとは限らない。 限らないが、ありすのプロポーズを阻止できない以上、この手しか残されていなかった。 始めて出会った時こそ、まりさとの結婚など1%の可能性もない妄想にすぎなかったが、2か月近くをいっしょに過ごしたれいむなら、まんざら可能性のない話ではないだろう。 どうせこのまま何もしないでいても、何も変わらないか、ありすに取られてしまうかのどちらかだ。 それにありすがいつプロポーズをするか分からない以上、考えている時間もあまりない。 れいむが、一生に一度の決意を固めた瞬間であった。 とは言え、今のれいむとまりさとでは、あまりにもつり合いが取れていなかった。 まりさは二日に一度虐待されているのに対し、れいむはその恩恵をただただ甘受しているニート生活。 れいむもまりさと同じ舞台に上がる必要があった。 怖かった。とてつもなく怖かった。 しかし、れいむに道は残されていない。 れいむは、ようやく虐待を受ける覚悟を決めた。 その6へ
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※ぬるいです ※読みづらいと思われます さらさらと流れる小川で胡坐をかいて釣りをしている男がいた。春の陽気にあてられたのか、首がかくんかくんと舟をこいでいた。徐々に竿を持つ手の力が抜けてきて 先端が川に浸かってしまった。それでも男は目を覚まさなかった。 「ゆっくりしていってね!」 その声ではっとなって目を覚ました男は竿を引き上げて針につけていた餌がなくなったことを確認した。針の先に餌ダンゴを取り付けていた男は さっき声が聞こえたことを思い出して後ろに首を回した。 するとそこにいたのは黒い山高帽を被り、黄色い毛を生やし、子供の落書きのような顔をした丸っこい何かだった。人とも動物とも思えないそれと 関わるのは面倒と思った男は無視をして釣りを続けることにした。 黒くて丸い何かは男に無視されたことによほどご立腹なのか、男の近くで「ゆっくりしていってね!」と鳴きながら跳ね回っていた。それでも男は無視を続けた。 諦めたのか、その黒いのは跳ね回ることをやめてぴたっと止まった。そのままどこかへ行ってくれ、と男は願ったがその黒いのはどうやら釣った魚を入れた網に 興味が移っただけのようだ。川岸に小石で固定してある狭い網の中を泳いでいる魚に目を引かれ興味津々に近づいていった。網の重り代わりにしてある石を動かされて 釣った魚に逃げられたらたまらないと思った男は、黒いのを手で追い払った。その手から逃げて一旦距離をとった黒いのはそれでもどこかへ行かなかった。 「ゆっくりしていってよー!」 その後も近づいては追い返されを繰り返していたが、業を煮やした男が払いのけるように黒い帽子を叩いた。帽子が後ろの方に飛んで行った黒いのは 驚いて帽子をすばやく回収して被りなおした後、男の方を見てあたりを跳ね回った。 「ゆっくりしていってよー!ゆっくりしていってよー!」 こんな大声を出されては魚に逃げられてしまうと男は黒いのを掴んで投げてしまおうと考えた。釣り針を引き上げ、竿を地面においてその丸い顔の両脇を掴んだ。 だが投げなかった、あまりにも触り心地がよかったからだ。男はしばらくその頬の感触を堪能した。頬をこねくり回したり、強く押してみたり、 表情が変わる様子を見て楽しんだりした。 「ゆっぐっ…ゆっくりぃ…ゆぅ…ゆっゆっ…」 男はひとしきり遊んだ後、閃いた。黒いのを草が生えている場所に置き、その上に自分の頭を置いた。枕にちょうどいいと考えたのだ。黒いのは逃げようと 躍起になって暴れていたが疲れたのかしばらくするとおとなしくなった。先ほどの眠さも相まってすぐに男は眠りに落ちた。 「ゆぐぐぐぐ…ゆっぐり゛ぃ…ゆっゆゆゆゆゆ…ゆっ!」 何度かもぞもぞと動き、やっとのことで男から離れることのできた「まりさ」は一度も振り返ることなく、急いで逃げ出した。が、途中で帽子が脱げて その度に拾いに戻ることを何度か繰り返した。 男は結局、日が暮れるまでそこで昼寝し続けた。 木漏れ日で明るく照らされた林道を額や首に浮き出た汗をふき取りながら歩く女がいた。久しぶりに両親に会いに行った帰りだった。本当は孫の顔を 見せたかったが幼子には長い道中、しかも夏の日差しで体調を崩しかねない。よって子供を夫に預けて一人だけで里帰りをしてきたのだ。この林道を抜ければ 家はもうすぐなので我知らず歩みが速まり、頭の中は目に入れても痛くないほど愛しいわが子のことでいっぱいだった。 「ゆっくりしていってね!」 急に声をかけられ歩みを止めた女は足元から声がしたような木がしたが周りに人の姿は見えない。気のせいか、とまた歩き始めると 「ゆっくりしていってね!」 また声がした。声のする方を見るとお地蔵様が立っていた。まさかお地蔵様が?とじっと見つめた。 「ゆっくりしていってね!」 地蔵からではなかった。さらに下の方から声がした。そこには黒い髪を生やしてその後ろ髪を紅白の大きなリボンで飾り付けている奇妙なものがいた。 何がそんなに誇らしいのか眉を逆ハの字にして見上げている。それはまるでお供え物の饅頭のようにお地蔵様の前に鎮座していた。 「ゆっくりしていってね!」 また鳴いた。これが鳴き声なのだろうか、ためしに女は鳴きまね、といってもほとんど人間の言葉だがゆっくりしていってね!と言った。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 返されたのがそんなに嬉しいのか、跳ねながら何度もそれは鳴いた。 これには女はうっかりときめいた。彼女はとかく、猫や子犬など愛くるしい生き物が好きだった。この不可解な饅頭もどきも可愛いと感じてしまった。 撫でてみたいと思ってしまったら既に手はそれの上に伸びていた。手を警戒しているようだが逃げ出す気配はない。女はその場でかがみこんでそれの髪に手をやり、 撫で始めた。 「ゆぅ…ゆっくりしていってね」 撫でられる感触を楽しむように目を閉じて喜んでいるように見える。辛抱ならなくなった彼女は撫でていた手を放し、抱えてひざの上に置いた。手が離れたことを 不思議に思ったがその饅頭もどきは宙に体が浮く感覚を楽しんでいる様子だった。さらに輝くような笑顔を見せるそれの頬をつまんでみた。予想をはるかに超越した そのやわらかさと滑らかさに心奪われてしまった女はさらにぐにぐにと引っ張った。 「ゆっくひぃゆっくりひぃっゆっく…ゆっぐり゛ぃ゛!ゆっぐり゛い゛!」 つい力が入りすぎたか、それは泣き出してしまった。あわてて女は謝りながら頬をさする。 「ゆっくりっ…ゆっくり……ゆっくりしていってよ!」 次第に泣き止んだそれは頬を膨らませて怒っているような態度をとった。その後、女のひざから飛び降りたそれは地蔵の方角、林の中へと跳ねていった。 女はお持ち帰りしたかったなと考えていた。紅白の饅頭「れいむ」は女を一瞥したあと林の中へと去っていった。 落ち葉降り積もる森の中で一人の少年が木を見上げて木の枝を振っていた。その木にはたくさんの木の実がなっていた。それが取りたくて棒で取ろうと考えたのだが 少年の背丈ではぜんぜん届かなかった。手に持っている木の枝より長いものは見当たらない。ならばと今度は木を揺らしてみることにした。木を思いっきり蹴ってみて 揺らしても実は落ちてこなかった。次に少年は助走をつけて全体重を乗せて体当たりしてみた。今度こそ木は大きく揺れた。肩の痛みに顔をしかめつつ、 少年は見上げた。が、視界いっぱいに広がる何かが降ってきた。避けることもままならずに少年は何かが顔に当たった衝撃で後ろに倒れこんだ。 顔面の痛みで泣きそうになるのを必死でこらえていた少年はにじむ世界の中、降ってきた何かが目にとまった。それを拾い上げた少年の心は痛みで泣きそうに なったことや、それに対する怒りよりも、これは一体なんなのかという興味が勝った。 それは桃色のよくわからないものがくっついていて、青い毛が生えており、一部が皮膜のようなもので覆われていて、全体的に柔らかかった。これはなんだろう、 誰かが木の上においていったのだろうか?少年は尽きることを知らない疑問でわくわくしながら皮膜がはがれることに気付いた。どきどきしながらはがしていくと 手に持っていた何かがぴくっと反応した。次の瞬間には皮膜が勢いよくはがれ、なかから笑い顔をして牙を覗かせる何かの顔を見ることができた。 「うー♪」 楽しそうに鳴くそれを見て、少年はますますわけがわからなくなった。皮膜のようなそれは羽で蝙蝠のものに良く似ているが、蝙蝠はこんな変な顔をしていない。 あれこれ考えているうちにそれは両脇に生えた小さな羽でパタパタと飛び始めた。まさか飛ぶとは思わなかった少年は度肝を抜かれ、口を開けながら見上げていた。 「ぎゃおー♪」 ある程度高くまで飛び上がるとそれは少年に向かってきた。先ほどの顔の痛みを思い出した少年はさっと避けた。と言ってもそれは蝶にも劣る速度で飛んでいた。 あっさりと避けられたそれは勢い余って地面に突っ込んでいった。落ち葉の上をずざざと滑りながらそれは止まった。 「うー!うー!」 なんとも情けない声で泣きはじめたそれを少年は後ろから上と下を挟むようにして掴みあげた。羽を大きく羽ばたかせ、あらん限りの力で暴れたが少年も 放してなるものかと対抗していたが、腕を大きく振り回されていた。 「うー!!うー!!うー!!うー♪…うっ?」 やっとのことで少年の手から逃れたそれは頭の上にあったはずのものがないことに気付いた。一方、少年は手の中に残った桃色の何かを眺めていた。 取れるとは露とも思わなかった、それにこれは何か布切れっぽい感触がするな、と考えていた少年はまたこちらに向かってくるそれを避けた。 先ほどのような満面の笑みはなく、あわてている様子だった。しばらく避けているとどうやら桃色の布めがけて飛んでいることに気付いた少年は走り出した。 このまま家までついてこさせて母に見せてやろうと考えたのだ。 「う゛ー!!う゛ー!!ぎゃおー!!」 走っていってしまう少年を「れみりゃ」は両目から滝のように涙を流して虚勢を張りながら必死に羽を羽ばたかせて追いかけていった。 深々と雪が降り、あたり一面を銀の世界に染めてゆく。それと同時に地面も植物も隔てなく凍りつかせる無慈悲な寒さの冬。 そんな世界とは程遠い囲炉裏の火に暖められた室内で男は寝転がり、物思いにふけっていた。この家は自分が独り立ちしたときに建ててもらったもので 嫁を貰うまではずっと一人で暮らしてきた。やがて結婚し二人になり、子供もできてあれほど狭いと思っていた家だったが子が巣立ち、妻に先立たれて これほど広かったのかと思い知った。そして一人だけの冬を迎えた。はじめこそなんでもないと考えていたが、いざ迎えるとなんとも孤独だった。 とにかく人と話したかった。それで少しは紛れるだろうか、だがそれは叶うことはない。男の心は空虚だった。 その時、家の戸を誰かが叩く音がした。男は喜んだがなんとなく恥ずかしくなり、声に感情が出ないように注意してどなたかなと尋ねた。 誰も答えなかったが戸はまだ叩かれている。なんなんだと思いながら男は戸に立て掛けてあった用心棒をはずし、外に顔を出した。 「「ゆっくりしていってね!」」 そこにいたのは黒い帽子を被ったのと、大きなリボンをつけた「ゆっくり」とか呼ばれるけったいなものだった。これが噂に聞くゆっくりかと男は二匹を眺めた。 外はこんなに寒いというのに白い息一つ吐いていない、呼吸をしていないのだろうか。そして二匹の上には降り積もった雪が乗っかっていて見ているこっちが寒くなる。 そして男は何事もなかったかのように戸を閉めた。途端に叩かれる戸。喧しいと感じた男はまた戸を開けて二匹を睨んだ。 「「ゆっくりしていってね!」」 また同じ言葉を繰り返す二匹を男は掴みあげて遠くに放り投げた。雪の中に半分ほど仲良く埋まる二匹。清々した気分で家の中に入っていった男は しばらくした後にまた戸が叩かれる音にうんざりした。 腹が減って晩飯の用意をしているときもまだ叩かれていた。 食べているときも戸は揺れていた。 酒を片手に晩酌しているときに二匹が「ゆっくりゆっくり」と言いながら戸を叩いていることに気がついた。 眠くなってきて寝ようと思って布団を敷いていたときにとが叩かれていないことに気がついた。やっと諦めたかと男は眠りについた。 夜が明け、布団の中でもぞもぞと寝返りをうって男は目が覚めた。喉の渇きを覚えたので水を貯めてある瓶から柄杓で水を掬おうとして残りわずかなことに気がついた。 まずは家の外にある井戸から水を持ってくるとしようと、男は桶を片手に戸を開けた。吹き込む寒さに体をぶるっと震わせて男は遠くを眺めた。 遠くに見える山々は白く化粧がされていて、空はどこまでも澄み渡る蒼だった。そんな調子で足元を見なかった男は指先を何か固いものに打ち付けた。 桶を落とし、痛む指先に手をやり、屈んで始めて男は目の前のものに気付いた。 なんとそれはあの二匹であった。だが全く動かず、両目は閉じられていた。手で触ってみると氷のように冷たく固かった。まさか凍りついてしまうとは 思わなかった男はちょっとした罪悪感から両手を合わせ、二匹の冥福を祈った。そして二匹を日のあたる場所に移動させて、男は井戸へと向かった。 白い息を吐きながら男が井戸から水を引き、桶へと入れていると 「「ゆっくりしていってね!」」 驚いた男が急いで二匹を置いといた場所に目を向けるといたはず、いや、あったはずの場所には何もなく、周りを見渡しても影も形もなかった。 理解の範疇を超えてしまった男はその場で固まっていた。 家の軒先に垂れ下がっていたツララが折れて、地面へ深く刺さった。 ~あとがき~ 唐突にゆっくりしていってね!ぐらいしか話せないゆっくりが書きたくなった、やっぱり難しい。 ちなみに舞台はそれぞれ四季を意識しており、自分が好きな情景を描いてみました。 なんというか、拙いですね、申し訳ない。 書いた奴『オマケ』 蛇足 敷き詰められた紅葉の中で二匹のゆっくりが頬を寄せ合い眠り、もといゆっくりしていた。 その二匹は「みのりこ」と「しずは」という、秋限定で現れるゆっくりだった。二匹は心の底からゆっくりできてとても幸せだった。 だがみのりこが不自然な揺れに気がついて落ち葉からそっと顔を覗かせた。そこには木の枝を持っている男の子が一人いた。何がしたいのかはわからないが こんな近くで飛び跳ねられてはこちらはたまったものではない。しずはを促してみのりこはそっとそこから離れることにした。だが時既に遅し。 男の子が倒れこんできて、慌てて二匹は避けようとしたが間に合わず、みのりこは男の子の背に押され、落ち葉に埋まり、しずはは男の子の後頭部と地面に挟まれ 「ぐげ」とヒキガエルのような声を出して潰れた。 しばらくして男の子がどこかへ行くと、やっと回復したみのりこがのろのろとしずはのところに行くと男のが軽かったおかげか無事なようだが目に涙を浮かべ、 ぷるぷる震えていた。みのりこが頬を当てるとしずはのダムが決壊した。みのりこが頬を擦ったり、涙を舐め取ったりして慰めたがしずははなかなか泣き止まなかった。 やっとのことでしずはが泣き止むと二匹はゆっくりできる場所を求めて、森の中を仲良く跳ねていった。 このSSに感想をつける
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「つかさー。入るぞー」 がらがら。 お姉ちゃんが私の部屋に入ってくる。 「あ、お姉ちゃん」 「明日のお泊り会のことだけど、って、本読んでるの?」 「うん、四月にゆきちゃんからもらったの」 「へー。どんな話?」 「ええとね、まだ最後まで読んでないんだけど、頭がよくて何でも知ってる、なんかゆきちゃんに似た人と、 よくどじをして、天然な、やっぱりどことなくゆきちゃんに似た人の恋愛小説だよ」 「へー」 「あ、それはそうと、お泊り会の話って何?」 「あ、そうそう。寝るときの部屋割なんだけどさ、あれ、私の部屋に私とこなたで、つかさの部屋につかさと みゆきが寝ることにしない? あ、いや、ほら、さすがに4人が同じ部屋に寝ると狭いし、で、でもなんかこなたと みゆきを一緒の部屋にするとなんかこなたがセクハラとかしそうだし、ええと……」 「う、うん、わかったよ。そんなに力説しなくても……」 「そう、それじゃあお休み」 「お休みー」 そっか、明日はお泊り会だし、もう寝たほうがいいかも。そう思って本に栞をはさんで本棚にもどした。 ちなみに、この栞もこの本と一緒にゆきちゃんからもらったんだ。赤い薔薇の押し花で、すごく気に入ってるの。 本棚に本を戻すと、電気を消して、ベットに潜った。 翌朝、お泊り会の当日。 駅前でこなちゃんと会った。 「おーっす」 「おはよう」 「おはよう」 「なんか、つかさは眠そうだよねぇ」 「そういうあんたは今日に限っては眠くなさそうね。いっつもはネトゲのやりすぎとかで眠そうなのに」 「ほんとだ。どうしたの、こなちゃん」 「いやぁ、今晩体力使うからねー。ねえ、かがみ」 「あ、あんた人前でなんてこと言うのよ!」 お姉ちゃん真赤。でもどうして怒ってるんだろう。今の会話で怒るようなとこなかったような気がしたけど。 でもほんとにこなちゃんはいつもと違ってなんか眠くなさそう。どうしたんだろう。 お昼、お姉ちゃんとこなちゃんとゆきちゃんと一緒にお弁当を食べていた。こなちゃんはチョココロネだけど。 「あ、今、ふと思ったんだけどさ、バレンタインのときにチョココロネをあげてもいいのかな?」 「めちゃくちゃ時期はずれな話題だな……。でもいいんじゃない? もらう人が喜べば」 「うんうん」 「そういえば、日本にはバレンタインに男が女にチョコを贈るような風習があるけど、 それの本バージョンってなかったっけ」 「サン・ジョルティの日ですね」 「あ、そうそう、それそれ」 「今はスペインの自治州であるカタルーニャ地方というところに、昔、ドラゴンがいました。 住人はドラゴンの怒りを納めるために、毎日一人ずついけにえを捧げていたんです。 そしてお姫様がいけにえになるときに、あらわれたのが騎士、サン・ジョルティだったわけで、 彼がドラゴンを倒し、お姫様を救い出したとされています。その時の竜の血からは見たこともない 赤いバラが咲いたそうです。それで、四月二十三日をサン・ジョルティの日として、愛する人に美と教養、 愛と知性のシンボルとして、一本の薔薇と一冊の本を贈るそうです。 もっとも、日本ではあまり定着していませんが」 「へえー。やっぱり物知りだね、みゆきさんは」 「いえいえ、そんな」 「……こなた」 「ん、何、かがみ」 「……あーん」 「えぇ! 何かがみ、いきなりデレモードになっちゃって、何か変なものでも食べた!?」 「なによ、いらないならいいわよ!」 「えぇぇ、そんな殺生な」 ぱくっ。こなちゃんはそう言いながらお姉ちゃんが差し出したお弁当を食べた。二人とも、真っ赤です。 「弁当の中身を見る限り、今日はかがみがつくったんだよね。おいしいよ」 「ばっ! 質素で悪かったわね!」 「じゃ、お返しにあーん」 「チョココロネでかよ!」 ぱくっ。そんなことを言いながらお姉ちゃんはこなちゃんのチョココロネを食べた。 突然起こった異常事態に呆然としていると…… 「つかささん……」 「え、何、ゆきちゃん」 「……あーん」 顔を真っ赤にしてゆきちゃんが「あーん」をしてきた。私は、呆然としている頭を何とか再起動させて、 ちょっと迷ったけど、ゆきちゃんのお弁当をぱくっと食べた。 「ゆきちゃんのお弁当、美味しいね」 「そ、そうですか、ありがとうございます」 それにしても、ゆきちゃんまでどうしたんだろう。友達同士で「あーん」ってやるの、はやってるのかな? あっ、そういえば。 「ゆきちゃん、お返しにあーん」 ぱくっ。「あーん」ってしてくれたらやっぱりお返ししなきゃだめだよね。 「幸せです……」 「うん、幸せだよね」 ゆきちゃんが全身を真っ赤にして小声でささやくのを聞いて、私はそう答えた。 ゆきちゃんにもらった本に書いてあったけど、こんな風に友達と過ごすひと時が幸せなんだよね。 ふと、クラスメイトの半分以上が私たちに注目しているのに気づいた。ほかの三人も気づいたみたいで、 この日のお昼は無言のまま食べるということになってしまった。 学校が終わって、柊家。私たち四人はお姉ちゃんの部屋で今日出た宿題をしていた。 「ゆきちゃん、ここがよくわからないんだけど」 「ここですか? ここはですね……」 四人集まって勉強するときはこなちゃんはお姉ちゃんに、私はゆきちゃんに聞くことが最近多い。 宿題が終わった後、みんなでゲームしたんだけど、このときもこの組み合わせだった。 なんか最近この組み合わせが多いなぁ。いやじゃないからいいけど。 夕食は、私が作ることになっていた。 「手伝います」 「ありがとう、ゆきちゃん」 ゆきちゃんが手伝ってくれることになった。ありがとう。 ふと、また私とゆきちゃん、お姉ちゃんとこなちゃんの組み合わせになったなあと思った。 そのことをゆきちゃんに聞いてみることにした。 「そういえば、ここ最近、私とゆきちゃん、お姉ちゃんとこなちゃんの組み合わせが多いよね。なんでだろうねー」 「なんだか最近かがみさんと泉さんが自然に二人になることが多いんですよ。ですから、それの影響じゃないかと」 「ということは、私たちはあまりものってことかぁ」 「うふふ、でも私はつかささんと二人というのはとてもうれしいですよ」 「えへへ、ありがとう」 うん、この組み合わせが多くなってるけど、誰も嫌がってるとかはないみたい。よかった。 「その人がね、おかしいなって思って、ポケットを探ったら、朝捨てたはずの血が付いたロザリオが 入ってたんだって」 「キャーーーーーーーーーーー!!」 こなちゃんによると、「夏の夜は怪談だよ」ってことらしい。今晩のためにいろいろなところから怪談を 集めてきたらしいけど、怖すぎだよ……。あ、もしかして、朝言ってた「今晩体力使う」って、もしかして これのためだったの? だったら別にそんなに気合い入れなくてもよかったのに。 とても怖くて、ずっとゆきちゃんにしがみついてた。お姉ちゃんはずっとこなちゃんにしがみついてたみたい。 自分でも自分の顔が青白くなってるのがわかった。それなのに、ゆきちゃんの顔は、部屋が薄暗いからよく 見えなかったけど、なんだか赤かった。ゆきちゃん怖くないのかな。ゆきちゃんすごいなぁ。 夜。昨日お姉ちゃんと打ち合わせしたとおり、ゆきちゃんは私の部屋で、こなちゃんはお姉ちゃんの部屋で 寝ることになった。 うー、でも、さっき怪談とか聞いてたから、寝れそうにない……。 「ねえ、ゆきちゃん。一人だとさっきの怪談思い出して寝れないから、一緒の布団で寝ていい?」 「え、ええ、かまいませんよ」 私は許可を得て、ゆきちゃんの布団に入った。その後、ゆきちゃんと話をしながら、やっぱり怪談を 思い出しちゃったりして、あまり寝付けなかった。 そんなときだった。声が聞こえた。この前も聞こえた、甲高い声が壁越しに聞こえた。 「ねえ、ゆきちゃん。この声なんだろうね」 私は、内心不安になりながら言った。ゆきちゃんも怖いかもしれないから、声をなるべく普通にして言ったけど。 「え、え、ええと、ええと、お、お化けが何か言ってるんじゃないですか?」 「ひえあっ!!」 反射的に、ゆきちゃんにしがみついた。こ、こわいよう。お化けこわいよう。 「ゆ、ゆきちゃん。こ、このまま、ね、寝てもいい?」 「え、ええ」 もう震えを隠すこともできずに尋ねると、ゆきちゃんは許してくれた。 朝起きると、四人ともとても眠そうだった。 ぼけぼけ遊園地へ続く コメントフォーム 名前 コメント ここまで来て こなかが、みゆき どちらの気持ちにも気づかないとは 極上の天然っぷりだ~☆ つかさの ぼけぼけっぷりに 魅了されっぱなしです -- 名無しさん (2011-04-15 10 20 18) ナイスお泊まりだなあ。つかさがひたすら天然ノンケなのがいい。 -- 名無しさん (2009-12-15 15 42 59) 何度目かに読み返して初めて気付いたんだが、 みゆきは、サンジョルディの日に、つかさに一本の薔薇と一冊の本を贈ったんだなw 作者さんの芸の細かさに敬服。 -- 名無しさん (2008-01-02 18 58 22)